2014年3月22日土曜日

崖のワイヤーネット

 夏井川渓谷の“リンカーン岩”にワイヤーネットが張られた=写真。そばに水力発電所がある。下流の発電所の取水口がある。その導水路に沿って巡視路がある。人と施設を落石から守るための措置だ。

 あの日、いわきの沿岸部は巨大津波に襲われた。溪谷では至る所で落石が発生した。目に見える限りで最大の落石が、わが隠居(無量庵)の対岸で起きた。そのあとが、頬のこけた“リンカーン岩”だ。
 
 1カ月後の4・11には、いわき南部の塩ノ平断層(井戸沢断層)と湯ノ岳断層が動いて巨大余震が発生した。その影響で、御斉所街道(県道いわき石川線)で山崩れが発生し、計4人が亡くなった。いわきは沿岸部だけでなく、山あいでも大きな被害を受けたのだ。

“リンカーン岩”は、以前はドイツの画家ホルスト・アンテスが描く「頭足人」に似ていた。いわき市立美術館に収蔵されている「ホピの年」や、2005年に同美術館で開かれた「アンテスとカチーナ人形――現代ドイツの巨匠とホピ族の精霊たち」展で見た人物像とそっくりだった。

 3・11のあと、対岸の巡視路はしばらく行き来ができなかった。やがて“リンカーン岩”のふもとには“石垣”が組まれた。落石を細断して積み上げたのだ。下に立つと、“リンカーン岩”は顔がせり出したように、真上に見える。怖い。それ以上顔が壊れないようにするためのワイヤーネットだった。

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