2014年4月12日土曜日

テレビのホトトギス

 庭の柿の木に鳥がやって来る。常連はスズメ、ヒヨドリ=写真、ムクドリ、カラス。たまにメジロ、シジュウカラ、アオジ。この前はウグイスが現れた。今年初めてのさえずりに、すぐ茶の間からカメラを向けたが、枝が邪魔してすべてがピンボケだった。

 木曜日(4月10日)午後、BSプレミアムで映画「眠狂四郎勝負」を見ながら、「老侍の加藤嘉、昔から老け役だったなぁ、この悪役だれだっけ」などと思っているうちに、まぶたがくっついてしまった。

 カミサンの話だと、軽くいびきをかいていたらしい。そのうち突然、ガバリと起きて窓の方を見た。「トッキョキョカキョク……」。庭の木にホトトギスが来て、一声鋭く鳴いた。そう思った。「にしても、今は4月。ずいぶん早いな」と、瞬時にいぶかしんでもいた。

「ホトトギスが……」というと、「テレビ!」。テレビには広い野原が映っていた。その情景の効果音としてホトトギスの声が流れたのだ。それを、夢うつつのなかで庭の柿の木に来て鳴いたと、錯覚したのだった。わきで大笑いがおきた。村野四郎の詩「霊魂の朝」を思い出した。

 …「霊魂を食べて ふとるのよ」
 というこえが どこかでしたので
 急に胸が悪くなって目が覚めた
 
 厨房の扉があいていた
 母親が痩せたむすこに もういちど
 …「ベーコンを食べて ふとるのよ」
 と言っているところであった
 
 まこと肉と霊とのだんだら模様の春だ
 ユスラウメが咲いている
 
 ベーコンと霊魂。テレビと庭を行き交うホトトギス。わが心のなかでは、確かに庭の柿の木に来て鳴いたのだ。うれしくなって、目が覚めたのだった。

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