2014年4月30日水曜日

スギナも必要だ

 アメリカのニューディール(新規まきなおし)政策は、「テネシー河谷開発」が最大の事業だった。このダム堰堤(えんてい)の土砂流出を防ぐために、日本のクズが利用された。同じアメリカのジョージア州でも、1800年代末に土壌の流出防止と家畜の飼料のために日本からクズが輸入された。そのクズが今、アメリカで猛威を振るっている。

「ナショナルジオグラフィック」2005年3月号の特集<侵略しつづける外来植物>の米国編で知った。テネシー河谷開発は日本の国土総合開発の手本になった。「草の根民主主義」という言葉はこの事業から生まれた――そんなことも思い出した。

 それにはわけがある。あちらは大規模開発、こちらは小規模除染だが、いかに庭の土砂流出を防ぐか、という点では同じだ。
 
 夏井川渓谷にある隠居(無量庵)の庭の土がはぎとられ、山砂が敷き詰められた。草のない校庭のようになった。少し傾斜しているので、雨が降るたびに溝が深く、大きくなる。それで、庭の草は刈っても根は抜かないと決めた。
 
 スギナが地面を覆い始めた=写真。菜園のスギナはもちろん、引っこ抜く。地下茎が深い。根絶やしにするのはまず無理。それが、逆に庭の土をつなぎとめてくれる。クズも間もなく葉を広げ、つるを伸ばす。今年はクズにもがんばってもらおう。
 
 群馬県の山里で暮らす哲学者内山節さんの『自由論―自然と人間のゆらぎの中で』(岩波書店)にあるエピソード――。日照りの夏、畑をふと見たら少し大きめの石があった。取り除こうとして石を持ちあげると、石の下はわずかばかりの湿り気と冷たさを帯びていて、ミミズのような小動物が集まっていた。
 
 畑の土は小動物がつくっている。その小動物を小石が日照りから守っている。それと同じで、庭のスギナやクズも土砂の流出を防いでいる。根絶やしにはしない。

0 件のコメント: