2014年5月13日火曜日

吉田重信の「光跡」

 いわき市の現代美術家吉田重信さんが、平で二つの個展を同時に開いている。ギャラリー界隈では「光跡」と題してアクリル絵画=写真=などの小品を、ギャラリーコールピットでは「光る虹」と題して森の木に虹色の光を映した大判の写真4点を展示している。界隈は18日、コールピットは24日まで。

 もう30年くらい前の話だから記憶があいまいなのだが、彼の師匠の故松田松雄から連絡がきて、何かの賞をもらったか、入選したかした「若者」の記事を書いた。家業が自動車整備工場で、事故をおこして壊れた自動車の部品を組み合わせてオブジェ化した作品が高い評価を受けたのだった。立体作品におもしろさと可能性を感じた。

 若者はその後、「インスタレーション」という空間、あるいは自然環境を相手にした作品に取り組み、海外にも知られる存在になった。東日本大震災を経験して、いちだんと活動の場・機会が増えたようにもみえる。いわきで支援活動を続けているシャプラニール=市民による海外協力の会とも“協働”した。

 展覧会にはいつでも行けると思っているうちに会期が過ぎていた、ということがある。「きょうこそは」と自分に言い聞かせて、月曜日(5月12日)午後遅く、界隈へ出かけた。

 イブ・クラインの青にも似た「臨在の光」は、東電の福島第一原発事故がおきて以来、見る側に特別な思いをいだかせる。発災前からのシリーズだが、1999年秋の東海村JCO臨界事故で作業員が見たという「青白い光」を連想してしかたがなかった。見る側がやっと作品に追いついたのだと思う。
 
 偶然、会場にコールピットのディレクター氏がいて、界隈のオーナーに紹介された。あとで初めて、そちらを訪ねた。写真専門のギャラリーで、月に一度くらいのペースで企画展を開いているという。
 
 こちらは、森の内部に水と鏡で太陽光を反射させ、虹色を映し出すインスタレーションの写真だが、ディレクター氏が独立した写真作品として評価したからこその企画展だろう。

1点は、樹皮がまだらに、複雑にはがれたリョウブ(方言サルスベリ)の木の幹を、光の虹が射る。時期的には今ごろの、生命力に満ちた森の息遣いが聞こえてくるような作品だ。じっと見ていると、幹のまだらが動き出すような感覚に襲われた。

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