2014年5月17日土曜日

江筋の初夏のたたずまい

 小さいときのキラキラした記憶のひとつに、山里の暮らしと結びついた用水路がある。幅はせいぜい1メートル余り、深さは30センチほどだ。上・中・下水でいえば、中水としての利用だったろうか。水源は少し上流にある川で、堰(せき)を設けて水を引き込んでいた。今は3面舗装になっているはずだが、当時は素掘りだ。夏の夜にはホタルがきらめいた。

 母親に言われてザルに米を入れ、流れにひたしてといだことがある。野菜の泥も洗い流した。泥はすぐ沈み、白いとぎ汁もすぐ消えた。まさに「三尺流れれば水清し」だった。

 海に近い平野部のいわきで暮らすようになってからは、すまいからそう遠くはない山すその農業用水路(小川江筋)に心引かれるものを感じている。「江筋」は「疏水(そすい)」「用水」と同じだが、疏水ほど一般的ではない。ネットの辞書にも載っていない。

 おととい(5月15日)、カミサンが山すその寺に用ができたので、運転手を務めた。小川江筋が寺の前を流れている=写真。物を洗えるように、水辺に階段が設けられている。木々も水路を覆うように茂っている。車1台分の道が水路に沿って延びているところもある。

 小川江筋は江戸時代にできた。いわき市北部の水田を潤す大動脈だ。その水路と木々や小道、そばの家のたたずまいがなぜかなつかしい。日本の農村の、どこにでもある、人間が長年、手を加えることでできあがった、安定して美しい景観。

一帯が青田に変わりつつある今、小川江筋は大動脈らしくドクドクと脈打ち、輝いている。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

江筋は稲作農家にとって沢村様という神様からの贈り物 小川の取水口からくねりくねって各地の水田を潤し、太平洋へと流れていきます