2014年5月6日火曜日

二十日大根から始める

 夏井川渓谷にある隠居(無量庵)の庭に、「畑おこすべ~」で畳2枚半ほどの“ベジパッチ”(家庭菜園)=写真=をつくり、二十日大根の種を筋まきにした。カブも3~4粒の点まきにした。

 大型連休後半2日目の日曜日(5月4日)。午前は平の立鉾鹿島神社の祭典に出席し、午後は溪谷で土いじりをした。祭り日和、畑日和だった。

 去年は、早春に市が庭の放射線量を測定し、全面除染が決まったため、野菜の栽培を中断した。

 それから半年以上が過ぎた初冬、菜園を含む庭の表土が5センチほど取り除かれ、山砂が投入された。庭の平均線量は地上1メートルで毎時0.24マイクロシーベルトから0.17マイクロシーベルトに下がった。雨樋の排出口などはやや高い。が、それを除けば地表面で0.15前後だろう。

 家庭菜園を始めて18年になる。荒れ地同然だった庭の片隅にスコップを入れ、クワを入れ、ツルハシを振り下ろして石を取り除き、ササタケの根を断ち切って、落ち葉の堆肥を入れてきた。少しは畑の土らしくなったと思ったとき、東日本大震災に伴う原発事故がおきた。
 
 昔野菜の「三春ネギ」、これは意地でも栽培を続けると決めて、自家採種・保存・播種・定植を続けてきた。ところが去年、除染が決まったことと、行政区の仕事が増えたこともあって、ほったらかしにしておいたら、ネギが雑草に負けてやせてしまった。こうなると採種はできない。まだ冷蔵庫におととしの残りの種が眠っている。これを秋にまいて希望をつなぐことにした。
 
 そのための気力を持続するのに、もう一度、ゼロから野菜づくりを始めよう――。18年前の“原点”にかえって、二十日大根とカブの種をまいた。野菜づくりには失敗を含めて前の経験が生きる。流行がない。季節のめぐるなかで、必要なときに必要なことをするだけだ。その時期を逃したばかりに、わが三春ネギは風前の灯になった。

 ただ、山砂は土より粗く、繊細な種たちの布団には硬くて重い。きのう(5月5日)はいい具合に雨が降った。とはいえ、砂がはじけて種がむき出しになっていないか、気になった。ここは種の生命力にまかせるしかない。

 家庭菜園の魅力はなんといっても少量多品種にある。まず2畳半を二十日大根とカブに充て、次の2畳半はサニーレタスに、また次の2畳半はニンジンに……といった具合に、ゆっくりゆっくり小さなスペースをつくっていく。
 
 元英語指導助手のオーストラリア人女性が、夫と無量庵へ遊びに来たことがある。夫から、向こうでは家庭菜園を「ベジパッチ」ということを教えられた。まさに少量多品種栽培は野菜のパッチワーク。そのための「ベジパッチ」再生でもある。

0 件のコメント: