2014年5月8日木曜日

「お客さんが来てましたよ」

 新年度がスタートすると間もなく、行政区内の「個所検分」をやる。自分たちが住む地域を区の役員が見て回り、危険個所や道路の要補修個所の有無などをチェックして、行政に改善方を要望する。
 
 1年の間には、我慢の限度を超える“ほころび”が二つや三つは生じる。それを拾い上げ、住民の安全・安心につなげるのが「個所検分」の目的だ。今年度は連休明けのきのう(5月7日)午前に実施した。

 コースの最後に国道へ出た。歩道にせりだすように繁っている庭木がある=写真。何年か前に一度、春のいわきのまちをきれいにする市民総ぐるみ運動に合わせ、区の役員が出て剪定した。

 そろそろ剪定しないと――となって、そばの床屋さんを訪ねたら、お年寄りがひとり、ソファに座っていた。「(女性店主が)どっかへ行ってていねぇんだぁー」という。客がいるのに店主がいないとは不思議だ。

 あとでまた床屋さんを訪ねることにして、先へ進むと、近くの県営住宅の角で女性が2人、座って話し込んでいた。役員の1人が「床屋さんだ」という。声をかけると、左側の女性が反応した。

「1人では何にもできなくて……」。木々の剪定に往生している。「根元からばっさりやってもいいですか」「いいです」。あっという間に剪定が決まった。「ところで、店にお客さんが来てましたよ」というと、「あらら」と慌てて帰って行った。

 近くに双葉郡をエリアとする信用組合の支店が避難してきた。支店から頼まれて、自作の俳句だか短歌だかを飾りに行くところだったらしい。手に短冊をいくつか持っていた。

 あわただしく、目まぐるしく動く世の中でも、地域の片隅にはゆるやかな時間を生きる人たちがいる。なんとなく心があたたまるようなひとコマだった。

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