2014年6月3日火曜日

豆皿を楽しむ

 晩酌をやりながら、BSプレミアムの「美の壺<てのひらで愛(め)でる豆皿>」を見たのが5月23日。食事のときに使うしょうゆ皿や取り皿が、なんだか遊び心に満ちた美の小宇宙に思えてきた。

 カツ刺し(カツオの刺し身)のしょうゆ皿にと、いわき市大久の新谷窯のご夫妻に四角い豆皿を注文したことがある。無意識のうちに「てのひらにおさまる美」を欲していたようだ。

 主役はもちろんだが、脇役にも引かれる。美術でいえば切手、料理でいえば香辛料(七色唐辛子その他)やネギ。そんな人間に豆皿がピタリとはまった。

 番組の圧巻は、9つの豆皿に9種類の料理を盛り付けたお盆だ。料理で見せ、豆皿で楽しませる。小さい世界なのにぜいたくで華やかな雰囲気に満ちていた。

 豆皿の懐石料理に目がくぎ付けになっていると、裂(きれ)や陶磁器を扱う「古物商」でもあるカミサンが、『楽しい小皿』『まめざら』といった“豆本”を持ってきた。染付や色絵、印判の豆皿が満載されている。絵柄の多彩さ、手びねりのぬくもりに俄然、興味がわいた。

 若いとき、陶芸の個展に行くとよく「ぐい飲み」を買った。安月給のサラリーマンには最大の“脇役買い”だ。今度は豆皿を集めようかな――そんな気持ちにさせる番組だった。

 豆皿のテレビを見てからほぼ1週間後。十数人が参加したイベントで、帰りにお膳代わりの「おしのぎ」が出た。夜、カミサンがパックから取り出して豆皿に盛りつけた=写真。むろん、「美の壺」に刺激されてのことだ。幕の内のおかずとそう違わない料理が、なにか豪勢な懐石料理のように見える。
 
 そこへ客人がやって来た。食事は済ませてきたという。料理より酒だ。豆皿が演出するお盆の華やかさに見とれながらも、たがいに箸は出ない。結局、「味の曼荼羅(まんだら)」はあらかた、カミサンの口の中に収まった。

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