2014年6月4日水曜日

大型会津地鶏

 用事があって川向こうの大国魂神社(平・菅波)へ行ったときのことだ。裏参道への道の途中に鶏小屋がある。精悍な雄が1羽、その近くの道端で草だか虫だかを食(は)んでいた=写真。放し飼いというより、勝手に鶏小屋から出てきて自由に振る舞っている、そんな感じだった。

 2年前の秋、学生時代の仲間とベトナム・カンボジアを旅行した。アンコールワットの裏手に地鶏が放し飼いにされていた。白い鶏1羽と、シャモに似た黒い鶏2羽だった。ジャングルの中の道端で、やはり草だか虫だかをつついていた。放し飼いの鶏を間近に見るのは、そのとき以来だ。

 こちらの鶏は脚が太い。体つきもがっしりしている。「会津地鶏」にちがいない。

 ネットで知ったが、大型の会津地鶏は福島県養鶏試験場で肉用として改良された。昭和62年、下郷町で小型の純粋種が発見される。これにホワイトロックを交配させて大きくしたものに、ロードアイランドレッドをかけ合わせた。羽装が美しく、尾羽も黒く長い。その特徴を残しながら、こくとうまみに優れた食肉鳥が誕生した。焼き鳥(塩)が絶品だそうだ。

 いわき地域学會の前代表幹事でもある宮司さんから、会津地鶏を飼っている理由を聞いたことがある。会津では、春を告げる三匹獅子舞(会津彼岸獅子)の羽根飾りを補給するのに、この鶏を飼っている。そのいわき版、だ。黒く長い尾羽は、たしかに獅子頭の羽根飾りにふさわしい。
 
 郷土の伝統芸能を守り、次の世代につないでいくためには、こうしたふだんの努力、維持管理が必要になる。その水面下の動きは、コミュニティが当たり前のように保たれて初めて可能になる。大津波に襲われた沿岸部、原発避難を余儀なくされている双葉郡のコミュニティは、祭りは、伝統芸能は……。3・11後はいつからか、そこにも思いがめぐるようになった。

 裏参道の上り口にいると、ときどき、鶏小屋の方から野太い鳴き声が響いた。鎮守の森とアンコールワットの森が重なった。

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