2014年7月25日金曜日

イノシシを待つ

 夏井川渓谷の“先住民”はむろん、野生の生きものたち。人間がすみつく前から、自然の生態系のなかで命をつないできた。いわき市に隣接する川内村の文献から類推して、昔はシカも、オオカミもいたと思われる。が、今は一番の大型獣といったらイノシシだ。ここ何年かの間に隣接地区でクマ出没の情報が飛び交ったものの、溪谷へは現れた気配はない。
 
 もともと生息していたうえに、東日本大震災に伴う原発事故の影響でイノシシの捕獲数が激減した。事故をおこした原発の所在地(双葉郡)では、放置されたブタと交配が進んで「イノブタ」まで現れた。イノシシは増える一方だ。その余波がいわきの平地にも及んでいる。水田に電気柵を張り巡らせる農家が増えた。
 
 イノシシの掘削力はすさまじい。破壊的といっていい。渓谷にあるわが隠居(無量庵)の隣、錦展望台の駐車場の一部が、重機で掘り起こされたように凸凹になっていた=写真。
 
 わが隠居の庭は除染されて、山砂が敷き詰められた。家庭菜園を再開したものの、クワやスコップでの深耕は容易ではない。駐車場を掘り起こすより、わが隠居の庭を掘り起こしてくれ――。体力の衰えた人間としては、今こそイノシシの力を借りたい、イノシシを待つ、といった心境だ。

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