2014年9月4日木曜日

列車とイノシシ

 隠居のある夏井川渓谷へは、普通、日曜日の朝に出かける。渓谷を一番列車が走り抜け、二番列車がやって来る前の時間帯、つまり7時すぎ~9時前が多い。

 谷を縫って県道とJR磐越東線が並走している。隠居に着くまで踏切を2つ渡る。土地の人は渓谷のど真ん中、江田駅での列車の発着時間はもちろん、踏切の通過時間を熟知している。同駅を発着する列車は一日に上下合わせて11本しかない。

 まだ現役のころ、隠居に泊まるため、土曜の夕方に出かけたことがある。偶然、知り合いの車のあとになった。踏切でも、カーブでもよほどのことがないかぎり、ブレーキランプがつくことはなかった。エンジンブレーキでスピードを調整していたようだ。

 8月31日の日曜日は午前中、街で用事があった。午後1時ごろに街を出た。平野部から溪谷へと入る「地獄坂」の上り口に磐城高崎踏切がある。警報が鳴り、遮断かんが下りて、列車が通過した=写真。ここで列車の通過を待つのは数年ぶりだった。

 その磐東線は、夕方以降は野生の生きもの、とりわけイノシシが要注意となる。新聞によると、おととい(9月2日)午後8味5分ごろ、夏井―川前駅間の上り線(いわき方面)で普通列車がイノシシと衝突し、一時運転を見合わせた。

 まただ! 記憶に新しいところでは、8月20日の宵にも磐東線で普通列車とイノシシの衝突事故がおきている。
 
 同夜、平で夏井川流灯花火大会が開かれた。ビールを飲みたくて、家族で磐東線を利用しようとした若い仲間が、フェイスブックでつぶやいていた。列車の着時間数分前に突然、放送があった。「列車がイノシシと衝突したため、徐行運転をしております。2駅前に到着したところで点検を行う予定です」。結局、1人だけ家に戻って車を出す羽目になった。
 
 イノシシは夜間(人がいなければ昼間から)、活発に動き回る。夏井川渓谷ではときどき、土手や空き地が激しくほじくり返される。集落の住人からはこの十数年の間に、イノシシが列車にはねられたという話を何度か聞いた。今度も渓谷を中心に動き回っている1匹がはねられたのだろう。
 
 3・11後は明らかに事故が多発している――そんな実感がある。原発事故の影響でイノシシ猟をする人が減り、山中をバッコするイノシシが増えた。それで、列車にはねられるイノシシも増えた。
 
 ところで、事故がおきた区間と時間(午後8時5分)だが、磐東線の時刻表からは該当する列車が見当たらない。いわき行きの最終列車は、夏井駅発午後8時39分、その前の列車は同6時45分だ。次の川前駅には9分で着く。臨時列車? まさか。事故の発生時間が「8時45分」だったということはないのか。

0 件のコメント: