2014年10月27日月曜日

旬のヒラタケ

 この10日近く、飛び飛びに行事が続いた。10月18日はいわき地域学會の300回記念市民講座。21日は好間公民館の市民講座・好間学。22日は区費協力お願いのための地元事業所巡り。25日は東京へ。きょう27日は吉野せい賞の発表。あしたも、あさっても、しあさっても予定が入っている。

 せめて日曜日(26日)は夏井川渓谷の隠居で気ままに過ごしたい――と出かけたものの、午前も、午後も本を読んでいるうちに寝入ってしまった。前日の東京行の疲れが出たのだろうか。東京ではJRだ、地下鉄だと、駅から駅へ、駅から目的地へと歩いて、歩いて、足が棒になった。

 さて、隠居で寝入っている間にカミサンが周囲を歩き回り、対岸の水力発電所に渡る吊り橋付近で、森から帰って来る男性に出会ったそうだ。「袋にヒラタケだか、ナラタケだかがいっぱい入っていた。別の袋に入っていたのはマツタケにちがいない」という。マツタケはともかく、ヒラタケも、ナラタケも今が旬のキノコだ。運が良ければ大量に採取できる。

 話を聞いたからにはこの目で確かめたい――。隠居の庭にアラゲキクラゲとヒラタケの菌糸が同居する木がある。見ると、手の届かないところに長径10センチほどのヒラタケが1個、発生していた=写真。大きさといい、傘裏の白さといい、今が食べごろだ。男性が森から採ってきたのもヒラタケだろう。

 話は変わるが、「ムーミン」の作者、フィンランドのトーベ・ヤンソンは今年が生誕100年。彼女の『彫刻家の娘』という自伝的な作品にこんな文章がある。

「キノコ狩りにもやりかたがある。何百年も昔からずっと、キノコは冬の朝食に欠かせない大切な食べものだといってもいい。どのキノコにもあるふしぎな菌糸をたやさないよう、キノコの生える場所を、つぎの世代の人のためにも、とっておかなければならない。夏のあいだに家族の食料を手に入れること、自然をうやまうこと、このふたつは市民の義務だ」

「キノコ入手」の義務は、福島県東部では3・11前の話になってしまった。自然界の隅々まで汚染された結果、渓谷の森に入ること自体が激減した。庭のヒラタケも、撮っても採らない。キノコの味の記憶をかみしめるだけというのは、なんともむなしい。

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