2014年10月6日月曜日

三春ネギの種をまく

「三春ネギの種は10月10日(ごろ)にまく」。夏井川渓谷の小集落・牛小川の住民のことばだ。いわきの平地では、春まきが当たり前。平地のネギと山地のネギでは品種が違うのだろう。

 小集落に隠居(無量庵)がある。庭の一角を菜園にした。地元の伝統野菜である「三春ネギ」の苗をもらったのをきっかけに、自家採種をして栽培を続けている。10月10日は、昔は「体育の日」で祝日、そして私にとっては「三春ネギ種まきの日」。その日を基準に、逆算して苗床をつくる。今は10月10日に最も近い日曜日に種をまく。
 
 三春ネギの栽培サイクルはこうだ。初夏にネギ坊主から種を採り、保存し、秋に苗床をつくって種をまき、翌春、定植する。秋から冬にかけて収穫し、一部を採種用に残して越冬させたあと、初夏を迎えて種を採る。2年がかりのサイクルを繰り返すことで、三春ネギは未来へといのちをつないでいく。
 
 しかし、このサイクルが原発事故以来、おかしくなった。去年(2013年)は師走に入って、隠居の庭が全面除染された。表土が5センチほどはぎとられ、山砂が敷き詰められた。菜園も、それでいったん消えた。除染されることがわかっていたので、三春ネギの種まきも中止した。種は乾燥剤とともに小瓶=写真=に入れて冷蔵庫の中で眠り続けた。

 いつもなら半年弱のあとにまかれる種が、足かけ2年、実質1年半弱休眠していたことになる。前に一度、種が余ったので冷蔵庫に保管して、同じように翌年秋、その年の種とは別の苗床をつくってまいたことがある。発芽率は、思ったよりはよかった。が、その後の手入れがよくなかったせいか、生長率は悪かった。

 その経験を生かすしかないと思いつつ、きのう(10月5日)朝、休眠2年目の種をまいた。水はやらなかった。台風18号の影響で雨の予報が出ていた。まき終わったころ、予報より少し早く、ポツリ、ポツリと落ちてきた。天からのもらい水――を期待して、急いで種をまいたのだった。

 今朝起きると、風雨が強い。午前5時半現在の24時間降水量は、溪谷のある川前で71.5ミリ。「もらい水」にしては多すぎる。予報では、きょうはまだまだ雨が降り続く。種の覆土がどのくらい残っているか、気にかかる。

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