2014年11月18日火曜日

浜通りの花

『浜通りの花』(ほおずき書籍、2014年)の著者安原修次さん(船橋市)による阿武隈山地研究発表会兼いわき地域学會市民講座が土曜日(11月15日)、いわき市文化センターで開かれた。「野の花 写して30年」と題して、東日本の花をスライドで紹介した=写真。

 花が持つ癒しの効果は大きい――震災後は被災地支援を兼ねて『三陸の花』をまとめ、今年は福島県の『浜通りの花』を本にした。撮影までの努力が涙ぐましい。
 
 駐車場での車中泊は当たり前。アパートを借りても、家賃は1万円以内に抑える。浜通りの花の撮影では、わが友人たちが見かねて極安の物件をいわきに見つけた。
 
 撮影のために①自生を確認②蕾を確認③花を確認――と、3回は現地に足を運ぶ。道からそれてヤブこぎをしないと花には出合えない。ズボンを抜いて渓流を渡ることもある。
 
 いわきでは地元の植物研究家が案内人を務めた。今年78歳。たわしで皮膚をゴシゴシやるのが健康法とかで、かくしゃくとしたものだ。
 
 スライドの花ではジャケツイバラとカザグルマが印象に残った。ジャケツイバラは夏井川渓谷に自生する。カザグルマも同渓谷で一度だけ見た。『浜通りの花』には、ジャケツイバラについて福島県内ではいわき市だけ自生を確認、とある。どうしても、溪谷で目にした花に引かれる。
 
 リュウキンカにもスライドで“再会”した。昔、「いわきの尾瀬」ともいうべき、田村市に近い山中でリュウキンカの移植作戦に加わったことがある。消滅の危機にあった場所から人目につかない湿地へ――。『浜通りの花』に掲載されたリュウキンカがそれだとしたら、株数は増えているようだ。

 花の写真集はすでに30冊。山野草がブームになり、環境破壊が問題になっていたころは、本を出すとすぐメディアが取材に来た。今はさっぱりだという。自然に対するメディアの感性が鈍くなっていることを、ここでも知らされた思いがする。

 いずれにしても、野の花は盗掘の憂き目に遭い、浜通りの花は津波と原発事故に見舞われた。そのため、浪江・双葉町、葛尾村の花は撮影できなかった。「貴重な植物は地域みんなの宝。これ以上盗掘されないような対策を講じてもらいたい。大規模な護岸工事で、海浜植物も心配」と安原さんは、本のあとがきに記す。花もなにか言いたげな気がしてならない。

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