2014年11月22日土曜日

枯れ松の1年

 夏井川渓谷の景観は、岩と赤松の組み合わせから始まる。これに、同じ常緑樹のモミが加わり、多くの落葉広葉樹が急斜面を埋める。紅葉が終わると、溪谷にはモミの暗い緑と赤松の明るい緑があるだけだ。
 
 雨風にさらされてとがった岩盤を囲むように、赤松が三段になって生えている。その頂点の松がすっかり枯れてしまった=写真。

 異変に気づいたのは2年ほど前だろうか。1年前、松葉の変化を見るために隠居(無量庵)からの定点観測を思い立った。1~2カ月に1回くらいのペースでカメラを向けてきた。

 この1年の変化をみると――。去年の11月30日、緑色が勢いをなくして一部に黄色いメッシュが入っていた。今年の3月18日、黄緑色の葉はあるものの、大半が赤みを帯びる。5月4日、あらかた“茶髪”になった。6月8日、“茶髪”が濃くなる。7月22日、先端だけ赤いほかは灰色に。9月21日、そして11月16日、完全に枯れたらしく灰色一色になった。

 松が枯れる原因はなんだろう。植物の専門家は酸性雨を言い、松くい虫を言う。その両方ではないのか。

 この1年の経過を見て感じるのは、異変が始まった時点で松は命を絶たれたも同然だったのではないか、ということだ。次は、まだ赤い幹が時間をかけて“白化”し、やがて上部から折れて岩場から姿を消す。そのころには次世代の若松が育っているだろうか。世代交代がうまくいっているだろうか。

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