2014年11月27日木曜日

佐藤久弥さん

 いわき市暮らしの伝承郷へ行くと、必ず旧猪狩家へ寄る。昭和13(1938)年、40歳で亡くなった詩人猪狩満直の生家で、庭に「帰郷」と題する詩碑がある。10日ほど前にも、カミサンの運転手を務めたついでに訪ねた=写真。

 きのう(11月26日)朝、元の職場の後輩から電話がかかってきた。山村暮鳥や満直の研究者として知られる佐藤久弥さん(平)が亡くなったという。86歳だった。
 
 20代後半に出会って40年。1年に何度か酒席を共にする、あるいは職場に電話がかかってくる、という程度のつきあいだが、会えばいわきの文学について語り合い、教えられた。

 高校の英語教師をしながら地域文化の研究、とりわけ磐城平時代の山村暮鳥、同時代の猪狩満直の研究をライフワークにしていた。いわきで発行された総合雑誌「6号線」の編集者でもあった。

 10年前、初めて自宅を訪れた。庭でブルーベリーを栽培していることを知った。みやげにもらってジャムをつくった。そのころだったと思う。暮鳥その他の研究を引き継いでくれる人間はいないものか、いれば資料を譲ってもいい――そんなことを口にした。

 その6年前の平成10(1998)年、故里見庫男さんが音頭を取り、満直生誕100周年を記念して、いわき市民有志が北海道・阿寒町(現釧路市阿寒町)の農村公園内に詩碑を建立した。満直の代表的な詩集『移住民』から、久弥さんの選詩で「種選り」が刻まれた。

 その3年後には、暮らしの伝承郷の旧猪狩家の庭に「帰郷」が建った。いわき市と阿寒町と、満直を介して響き合う関係を築こう、という願いを込めての詩碑建立だった。
 
 暮鳥という恒星の周りを巡る惑星や遊星を調べることが、久弥さんの恩に報いることになる――それをあらためてかみしめる一日になった。

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