2014年12月19日金曜日

民法学者の憲法論

 いわきフォーラム‘90のミニミニリレー講演会がおととい(12月17日)の夜、いわき市文化センターで開かれた。いわきに住む民法学者の米倉明さん(東大名誉教授)が、某政党の改憲草案について、現憲法と比較・検討しながら話した=写真。

 ふだん憲法を意識して暮らすことはない。ましてや、改憲草案がどんな内容で、どう市民の暮らしに影響するのか、などとは考えたこともない。神棚にある憲法をまな板に載せる――そんな機会はめったにないので、聴きに行った。私にとっては初めての「憲法学習会」だ。

 改憲草案について、憲法学者はいろいろ発言をしている。専門家だから当然だろう。民法学者はどうか。だれも発言していないようなので、感ずることを市民に伝えることにしたのだという。

 米倉さんが問題にしたのは「第9条」よりも「第24条」だ。現憲法「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、……」が、改憲草案では「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。」が新設され、婚姻についても「両性の合意のみに基づいて……」から「のみ」が削除されている。

 現代の日本には、「家族」は実質的に存在しない。なのに、家制度の復活を考えているとすれば、その先に想定されるのは反民主主義、反個人主義(個人主義と利己主義は違う)、人権軽視、結局は全体主義国家の再来だ――と米倉さんはいう。改憲によって法体系が変わる。経済政策、社会政策が変わる。一部の「満足した人々」のために「貧困の大量生産」が生じる、ともいう。

 なるほど、憲法はわれわれの暮らしのなかに貫通しているのだ。憲法について考える視点、現憲法と改憲草案を比較することの重要性を教えられた。某新聞社の「憲法改正試案」も、同じように現憲法と比較・検討することで自分なりに判断をすることができるだろう。
 
 受講者は10人前後と少なかったが、それこそ1人ひとりに突き刺さるような熱血の講義だった。米倉さんが紹介したガルブレイスの『満足の文化』(ちくま学術文庫)を早速、買ってきて読み始めた。

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