2015年2月24日火曜日

いわきの北欧

 2009年秋の北欧旅行でノルウェーのフィヨルドを見てから、景観を考える尺度が変わった。人知をはるかにこえる雄大さ、荘厳さ、でも人間を拒絶するほどには冷たくはない。
 ノーベル文学賞を受賞したノルウェーの国民的作家・詩人・劇作家ビョルンソンが、ゲイランゲルフィヨルドについていったことば。「ゲイランゲルには牧師は要らない。フィヨルドが神の言葉を語るから」。そのことばをこえる表現が見つからない。それほどフィヨルドは人間を圧倒し、ひきつける。

 昨年(2014年)だったか一昨年だったか、国道49号を利用して山里の好間・大利から内郷・高野(こうや)を通って、平地の市街地に出た。高野小・内郷三中前の坂道を下りかけると、突然、南端の湯ノ岳から三大明神山、二ツ石山、鶴石山に連なる大きな山並みが前方に現れた=写真。<ノルウェーの山里に似ている>。目が喜んだ。

 そのときは写真を撮ることもなく通り過ぎた。日曜日(2月22日)、夏井川沿いに車で駆け上がり、小野町から平田村へ抜けて、国道49号を利用していわきへ帰ってきた。三和から好間へさしかかったとき、ひらめいた。「いわきの北欧」の写真を撮らねば。

 前に通ったときに強い印象を受けた坂道に車を止め、写真を撮った。じっくり眺めれば眺めるほど、高野の里にノルウェーの山里の記憶が重なる。

 フィヨルドの定番観光のひとつは、ベルゲンから列車で山岳部のミュールダルへ向かい、フィヨルドの内湾・フロムへと渓谷を列車で下り、そこからグドヴァンゲンまで世界自然遺産のネーロイフィヨルドを船で観光し、バスで再び山岳部へ駆けあがり、ボスからベルゲンへ列車で戻る、という周回コースだろう。
 
 フィヨルドは山がU字型の絶壁だが、氷河の始まりでもある山岳部はまだ斜面がゆるやかだ。家も山腹に広がっている。内湾に近づくと、集落は谷底を流れる川沿いの平地か岸辺に張りつくだけになる。
 
 自然の営みと人間の暮らしが溶け込んだ山里の風景は、日本であれノルウェーであれ、どこか懐かしい。ポイントは高野の里を抱く山並みが高く、大きく見えることだった。
 
 写真を撮り終えて車に戻ると、助手席から声がかかった。同世代の女性で、私も40年以上つきあいのあるカミサンの友達が、前に高野のガーデンカフェの話をしていた。そこへ行こう、といってきかない。いやだと言ったが、押し切られた。

 道路の案内看板に従ってその店を訪ねる。屋根の煙突から白煙が立ちのぼっていた。店も、広い雑木の庭も手づくり感に満ちている。がたぴしいう戸を開けて中に入ると、スリッパにはきかえた。顔に見覚えのある人間がマスターをしていた。その続きはあした。

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