2015年3月26日木曜日

サーファーと灯台

 連休初日の朝は阿武隈の峠を越えて墓参りをし、とんぼ帰りで夕方には豊間にいた。飲み会まで時間があったので、すぐそばの海岸堤防からぼんやり太平洋を眺めた。断崖の上に塩屋埼灯台が見える。おやっ、サーファーが歩いているぞ=写真。
 ここはほかの海岸同様、大地震で地盤が沈下し、大津波に襲われた。断崖の近くまで広がっていた集落が、あらかた消滅した。

 地盤が沈下した分も含めて、海岸堤防の補強・かさ上げ工事が行われている。堤防の内側には防災緑地ができる。西側の丘は高台移転の造成工事で丸坊主になった。土もかなり削りとられるようだ。

 いわきの海岸線は断崖と砂浜が交互に連なる。「いわき七浜」といわれるゆえんだ。豊間海岸の南端は合磯(かっつぉ=二見ヶ浦)。北の豊間と南の合磯に海水浴場があった。子どもが小学校に入ったばかりのころ、何家族か誘い合って合磯海水浴場を訪れた。ここの海を見ると決まって、下の子が磯でおぼれかけたのを思い出す。
 
 今は海水浴どころではない。原発事故の影響もあって、震災の年からここの海水浴場は閉鎖されたままだ。

 そうだ、震災から半年後、やはりこの海岸に立ったことがある。浅瀬に漁船が打ち上げられていた。白い車も屋根の部分だけを残して砂に埋まっていた。今はあとかたもない。堤防も壊れ、代わりに黒いフレコンバッグがずらりと並んでいた。

 かさ上げされた堤防、狭くなった砂浜、砂山に立つ重機……。そこへ突然、黒い人魚が海から這いあがって歩き始めた、そんな感じでサーファーが視界に入ってきた。殺風景な世界に一瞬、体温が宿った。

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