2015年6月12日金曜日

被災地訪問ツアー・下

 シャプラニールの「被災地訪問ツアー みんなでいわき!」(6月6~7日)=写真=は、いわきに住む人との対話と現場の視察を通じて、被災地の今を知ってもらおうという試みだ。今回で6回目になる。
 東日本大震災から5年目。きのう(6月11日)は3・11から1554日、4年3カ月の節目の日だった。

 シャプラのツアーはこれまでも、参加者が耳を傾ける・目を凝らす・肌で感じる――といったようなプログラムを用意して実施された。今回も津波被災者や原発避難者の日常と内面に触れることで、考えを深めるきっかけになるような企画が立てられた。

 いわき市内だけでも死者は460人、建物被害は9万戸余に及ぶ。一時提供住宅の入居者はいまだに3600人弱、加えて主に双葉郡8町村から原発避難をしている人が2万4000人余いる。被災地ながら、原発避難者を受け入れているいわき市は、行政も市民も単なる自然災害とは異なる特異な状況におかれている。(数字は継続して開設中の市災害対策本部の調べによる)

 ツアーの一行は初日、常磐の市健康・福祉プラザ「いわきゆったり館」に宿をとった。日中は、シャプラが運営している交流スペース「ぶらっと」の利用者と一緒に昼食をとり、場所をオリーブ農園に移して苗木の根元の草むしりをした。2日目は住民が原発避難中の双葉郡富岡町を視察し、四倉の沿岸部を見て「ぶらっと」へ寄ったあと、帰京した。

 私ら夫婦は草むしりと夜の食事・懇親会に加わった。カミサンはさらに翌日、「ぶらっと」へ出向き、ツアーに参加した親友夫妻らとおしゃべりを楽しんだ。

 草むしりには、久之浜や豊間の津波被災者、双葉郡からの原発避難者も参加した。いずれも「ぶらっと」利用者だ。ツアーの一行とまじりあって草むしりをすることで、なにか通じあうものがあったのではないか。

 ツアー常連のYさんとはFB友になり、親類のような感覚で発信する情報に接している。今回も新しいFB友ができた。シャプラのツアーのおもしろいところは、いわき・双葉と被災地以外の人々の“つながり”が生まれ、継続することだ。
 
 そうだ、忘れていたが、オリーブ農園には原発避難者に開放している“市民農園”がある。農園の西方、小高い丘の向こうに大熊町の応急仮設住宅がある。そこから野菜栽培に通っているのだろう。
 
 津波被災者であれ原発避難者であれ、一種の生きがい・楽しみとして土いじり(家庭菜園)をしていた人が少なからずいる。街に住む人間でも年をとれば土いじりをしたくなる。
 
 土いじりのできる空間があることで、ひととき、いわき市民と原発避難者が結ばれ、ツアーの一行と現地の人間がつながる。そればかりか、オリーブの花とミツバチ、ハート形の葉、風、雲、川がそれぞれの心象風景を彩る。センス・オブ・ワンダー(不思議さに目を見張る感性)に包まれることで、人は少しいのちをながらえられるのではないか。そんな感じを抱いた。

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