2015年6月4日木曜日

糠床が復活

 その道端の無人販売所はちょっと変わっていた。ネコ(一輪車)に板を渡し、その上に覆いのかかったプラスチックボックスが置いてある=写真。覆いは畑のうねに差し込むアーチ状の支柱を利用している。無人販売所というより、移動が簡単な「無人販売車」といったほうがいいか。4月末だったから、若い葉タマネギしかなかった。
 ドライブ中に直売所を見つけると、なにがあるか確かめたくなる。夏はキュウリやカブを買って糠(ぬか)漬けにする。冬は同じように白菜を買って漬物にする。

 去年(2014年)の夏、長年使っていた糠床がだめになった。で、5月の連休中に新しい糠床をつくった。塩分を控えめにしたのと、かきまわす回数が少なかったのが原因だったらしく、2週間もたたないのにシンナー臭がした。これまでにも何度か経験しているので、糠と食塩と唐辛子を加え、かきまぜる回数を増やしたら元に戻った。

 フェイスブックに古巣の後輩がコメントを寄せた。すると、後輩の友達のコメントが私のタイムラインにも載った。この記事(私のブログ)みたいに魚の皮を入れると糠床は傷むよ――そちら側の内緒話がこちら側に筒抜けではないか。

『夏目家の糠みそ』という半藤末利子さんの本がある。夏目家とは夏目漱石の家のこと。末利子さんは漱石の孫で、ご主人は歴史探偵の半藤一利さんだ。半藤家の糠床をテレビ局が取材にきた。嵐山光三郎さんが糠漬けのカブをぽりぽりやりながら、糠床の歴史を聞く。

「100年は続いている訳ですね」「いいえ、もっと。300年以上は続いていると思いますよ」。半藤家の糠床は、夏目家からわけてもらった(嫁入り道具のひとつだった?)。曾祖母、祖母、母、本人と江戸時代から受け継がれてきた。糠床の栄養分としてカレーの残りや煮汁、塩サケの食べ残しなどを加える。それで、傷むどころか独特の滋味、風味、こくが生まれる。

「ドラえもん」の大山のぶ代さんは女優志望の貧乏時代、亡母の糠床に助けられた。夫の砂川啓介さんが、彼女が認知症にかかっていることを公表した。不謹慎ながら糠床はどうなったか、と思った。

 3・11の際、浪江から東京へ避難をする途中に、いわきのいとこに糠床を託した人がいる。祖母の母のそのまた母の代から伝わる糠床だという。それぞれの家にそれぞれの糠床がある。魚の皮を入れると傷む、なんて底の浅い話ではないのだ。

「無人販売車」は、今はどうなっているか。その家の前を2回ほど通ったが、姿はなかった。端境期で売る野菜がないのだろう。

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