2015年7月7日火曜日

ハナビラニカワタケ

 土曜日(7月4日)の昼すぎ、いわき市立草野心平記念文学館からの帰りに、平・石森山の遊歩道を歩いた。ハナビラニカワタケ=写真=とアラゲキクラゲの写真を撮った。アラゲの発生は予想通りだった。
 石森山を四倉・大野二小側から駆け上がり、すぐ左折して林道絹谷石森線を東のふもと(平・絹谷)へ駆け下りた。途中に遊歩道の出入り口がある。林内の遊歩道は10コース。軸になるのはその出入り口から、すり鉢の底と上部のへりの道路をつなぐ「せせらぎの道」だ。

「せせらぎの道」にはミツバが群生している。菌類も至る所に発生する。目立つのはアラゲキクラゲとウスヒラタケ。道からそれて林内を巡れば、季節にもよるがタマゴタケ、ウラベニホテイシメジ、アカヤマドリタケ、エノキタケなどに出合える。

 石森山は菌類が豊富な里山。道に迷う心配もない。20代後半からおよそ20年間、丸かじりするように林内を歩き回った。日曜日早朝、わが子をたたきおこして野鳥観察に連れだしたこともある。野草も豊富だ。林内を巡ると、ここでなにを見た、ここでなにを撮った、ここでなにを摘んだ――記憶がたちまちよみがえる。

 毎月最初の月曜日。古巣の夕刊いわき民報に「あぶくま、星の降る庭」というタイトルで、生まれ育った阿武隈高地に関する文章を掲載している。その隣に載るのが、これまた月一掲載の「いのちを描く ボタニカルアートの世界」だ。絵と文を書いているのは冨田武子さん。

 冨田さんはいわきキノコ同好会の会長、私は副会長だ。冨田さんは画家として、私はいわき地域学會の人間として文章を書いている。担当者は2人がキノコでつながっていることを知らなかったにちがいない。私もキノコを取り上げることがあるが、ダブるとまずいので、できるだけ避けるようにしている。

 きのう(7月6日)、冨田さんは石森山のキノコのひとつ、ルリハツタケを取り上げていた。そのなかにこんなくだりがある。「石森山の遊歩道で青いキノコを見つけたことがあった。ルリハツタケとの初めての出会いだった。その後、何回も同じ場所を探しているが、いまだに果たさない」。ルリハツタケは、私も出合いたいキノコのひとつだ。
 
 冨田さんは食用にとどまらず、標本にして保存する科学的愛菌家だが、私は顕微鏡で胞子を観察するようなことはしない、できない。せいぜい採って食べて(あの日以前の話だが)、採取場所と時期を記録するだけだ。
 
 5月は晴れの日が多かった。キノコにはよろしくない日々が続いた。遅い梅雨がきて、「せせらぎの道」にようやく湿気がこもるようになった。アラゲキクラゲは乾燥して縮こまっていたのが、水分をみなぎらせて大きな耳のようになった。今度も目は喜び、口は寂しがっていた。

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