2015年9月10日木曜日

秋の贈り物

 おととい(9月8日)夕方。松田松雄著『四角との対話』の紙本が届いた=写真。オンデマンド出版による「秋の贈り物」だ。新書版287ページ。電子書籍の『四角との対話』はすでに、アマゾンなどで発売になったが、私にはやはり紙の本がしっくりくる。
 画家が1年間、いわき民報に随筆を連載してから36年、原因不明の病に倒れ、長い闘病生活の末に亡くなってから14年。娘・文さんが「回無工房」の名で書籍化した。「回無」は「えむ」と読むのだろう。

 さっそく手にとってパラパラとやる。この夏は、「あとがき」を頼まれたこともあって、36年ぶりに、手元にある新聞切り抜きを参照して全体を校正した。今も「同時代の書」として読める。36年たっても古くならない。父親の文章だから、というだけでなく、画家としての文章を評価しての編集・発行だった、と納得できる。

 いや、それ以上に胸のつかえがとれた思いがする。松田自身が書籍化を試み、印刷所に入稿しながら、いつの間にか作業が中断した。そして、闘病、死。単行本は幻になったと思っていたら、2年前、文さんから連絡がきて、一から入力しなおして本にするという。その思いが結実した。

 そして、きのう夕方。もうひとつの「秋の贈り物」が届いた。東京に滞在中のフランス人女性写真家デルフィーヌから、マルセイユのせっけんと、プチトマト?らしいオリーブオイル漬けが届いた。ローマ字つづりの日本語で次のようなことが書いてあった。

 月遅れ盆に、「じゃんがら念仏踊り」を踊る青年会がやってくる時間に合わせ、新盆(にいぼん)の親せき宅へ案内した。イギリス人のジェシカが同行した。「私たちは、ほんとにすてきな時間を過ごしました。じゃんがらを見て、とても興味を持ちました」「私たちは、秋に松田さんの展示会に行く予定です」

 2人がわが家の近くにある伯父の家に泊まったとき、松田松雄の過去の個展の図録を見せたか、回顧展が開かれる話をしたのだと思う。松田の絵は、東日本大震災の犠牲者を鎮魂し、生き残った者を慰撫する。ブログでそんな感想も述べていたので、頭にとどめておいたのだろう。
 
 松田松雄の、生まれ故郷での回顧展が10月3日から11月29日まで、岩手県立美術館(盛岡市)で開かれる。デルフィーヌには、私たちは10月11日に訪ねることを伝えた。

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