2015年9月5日土曜日

辛み大根は強い

 会津産の辛み大根が手に入ったのは、震災翌年の2012年夏。豊間で津波被害に遭い、内陸部の借り上げ住宅で暮らしながら、家庭菜園に精を出している知人(女性)から送られてきた。その年、通常より1カ月余り遅く種をまいた。冬に収穫したが、未熟なものが多かった。それでもおろして食べると、驚くほど辛かった。
 2013年師走――。夏井川渓谷の隠居の庭が全面除染され、菜園が消えた。三春ネギも含めて野菜栽培を休んだ。翌年春には栽培を再開した。知人からもらった辛み大根のさやが残っていたので、初秋に種を採り、まいて育てた。何株か越冬させた。それが、春に花を咲かせて実を結んだ。葉が枯れかかったころ、時期をずらして2回、さやを収穫した 
 
 三春ネギ同様、辛み大根も「自産自消」でいこうと決めた。そのためには播種~栽培~収穫~採種のサイクルにのせないといけない。秋大根は月遅れ盆が明けたころに種をまく。その時期を逃さないよう、こぶ状のさやから種を取り出した。

 さやを割ると、内部は“発泡スチロール”のようなもので覆われ、その中に直径1ミリ余の赤玉(種)が眠っている。親指の爪を使ってさやを割いたが、だんだん爪が痛くなった。これでは長続きしない。カッターナイフでさやに切れ目を入れ、左右に動かすと、案外簡単にさやが割れた。100粒ほど採ったところで、目が疲れたのでやめた。
 
 種まきが予定よりずれこんで8月最後の日曜日になった。去年栽培した跡を見て驚いた。双葉の時期を過ぎ、本葉へと生長した幼苗=写真=が11株ある。さやを収穫するときに、割いて種をこぼした覚えはない。自然にさやが割れて種が芽生えたのだろう。野生に近い辛み大根だから、生命力もそれに合わせて強いのか。
 
 こぼれ種から芽生えたシソは「ふっつぇシソ」、地中に残っていた子イモから育ったものは「ふっつぇイモ」。それにならって、この辛み大根は「ふっつぇ大根」になる。「ふっつぇ」は自生を意味する方言だ。
 
「ふっつぇ大根」を見て、大根の種まき時期が月遅れ盆明けという理由がわかった。野生の状態ではちょうどそのころ発芽する。人間が栽培するときも、自然のサイクルに合わせて種をまけ――植物の生態を観察して得られた“教え”だったのだ。

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