2015年11月25日水曜日

ネギに恋して

 初冬は地場のネギが出回りはじめる時期。一年中ネギを食べてはいるが、うまいと感じるのは晩秋以降だ。最初に口にするのは、田村郡小野町のNさんの曲がりネギだ。夏井川渓谷の紅葉が見ごろの10月下旬になると、JR江田駅近くにNさんが直売所を出す。ただ道端にトロロイモと曲がりネギを並べるだけだが、毎年、ネギを(トロロイモも)買う。
 今年はタイミングが悪かった。週末になると雨、ないし雨上がり。雨上がりの畑にはネギの病気予防のために入れない。で、トロロイモしか売っていない週末もあれば、直売を休む週末もある。曲がりネギを売っているかもしれない週末には、こちらが街に用事があって出かけられない。この秋はトロロイモを買っただけで終わった。

 いわきの平地で生産されるネギは白根が長くて太い。てかてか輝いている。在来ネギは風に折れやすく、規格出荷には向かない。で、自家消費のレベルに後退・縮小した。その在来ネギを探している。平地でも山里でも、直売所にネギがあれば買う。スーパーへ買い物に行っても、赤ネギ(茨城)や九条ネギ(京都)、曲がりネギ(宮城)を見ると、買って“試食”する。
 
 同級生との修学旅行は、土地のネギ文化を知る絶好の機会。京都では青ネギ(葉ネギ=九条ネギ)を食べた。会津の大内宿では、観光客が曲がりネギを一本箸にしてそばを食べていた。それを買ってきた。ベトナムやカンボジアでもネギを食べた。こちらは葉ネギだった。
 
 国内外を旅行するごとに、年を経るごとに、脳内にいわきと日本、アジアのネギ地図が書き込まれる。日本では白根をつくるのに土寄せをするが、台湾には、幅の広い高うねにしてまとめて栽培し、稲わらで畝を覆って白根をつくる「三星ネギ」があった。「三星ネギ」は食べなかったので、また台湾へ行くことがあったら、「三星ネギ」を真っ先に食べようと思う。

 郡山市の阿久津曲がりネギは、師走、いわきのヨークベニマルにも並ぶ。私が夏井川渓谷の隠居で栽培しているのは、その“きょうだい”と考えられる三春ネギ。友人・知人からはどこに畑があるのかと言われるくらいに狭いが、今年は種を採るためだけに栽培している=写真。
 
 三春ネギは初夏にネギ坊主から種を採り、冷蔵庫に入れて保存し、秋に苗床をつくって種をまき、翌春、定植する。秋から冬にかけて収穫し、一部を採種用に残して越冬させたあと、初夏を迎えて種を採る。2年がかりのサイクルだ。
 
 このサイクルが原発事故でおかしくなった。2013年の師走には、隠居の庭が全面除染された。猫の額の菜園もいったん消えた。除染を控えて秋の種まきは中止した。で、翌年秋、前年の残り種をまいたらかろうじて発芽した。当然、越冬した親ネギはない。今年の初夏、ネギ坊主はできず、種は採れなかった。

 前にも一度、種が余ったので冷蔵庫に保管して、同じように翌年秋、種をまいたことがある。発芽率はまあまあだった。が、今年はネキリムシにやられた。生き延びたのは半分以下。ちゃんと生長したネギ苗が少なかったうえに、週末だけの手抜き菜園なので、虫が好き勝手にネギを食い散らした。今年は、三春ネギは1、2本食べるだけにして、種採り用に越冬させる。

 そうそう、きのう(11月24日)、マルトへ買い物に行ったら、九条ネギがあった。いわき海星高校の実習船「福島丸」のラベルが張られたまぐろ加工品もあった。両方を買ってネギトロにした。ネギの緑色と加工品のピンク色とがマッチしていた。

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