2016年2月10日水曜日

「栗須参上」

 息子一家が遊びに来たとき、孫の親と英会話教室の話になった。「クリス」という人が開いている教室があるという。姓を聞いたら、いわき市の初代国際交流員ではないか。二十数年前、英語指導助手としていわきへやって来たイギリス人だ。彼には思い出がある。
 市役所発行のいわき在住外国人のための季刊英語広報誌「いわきビジョン」2015年冬号=写真=の和訳を読んで、クリスがいわきにいることを確信した(クリスの奥さんは、いわきの人間だ。姉だか妹だかが私と同じ職場にいたように記憶している)。最新号に彼のインタビュー記事が載っている。

 彼は「いわきビジョン」の創刊にかかわり、取材をして記事を書いた。その広報誌が「シルバーアニバーサリー」(25周年記念)を迎えたことから、現担当者が当時の苦労話などを彼に聞いた。

 そのころ、海に近い親友の家の離れで、いろりを囲んで酒を飲みながら「連句遊び」をしたことがある。全員素人だから、酔いにまかせて五七五と七七をつないだだけにすぎない。ほかにも、いろりの周りの白いふすまに墨で落書きをしたことがある。仲間の画家は絵を描いた。私もそこになにか一行を書き加えたような記憶がある。
 
 あるとき、その離れでの飲み会にクリスが来た。たぶん帰国が決まって、いつもの仲間で送別会を開いたのではなかったか。例によって、ふすまにいたずら書きをした。書を習っているというクリスの筆さばきが秀逸だった。しっかりした楷書で「栗須参上」と記した。これにはみんなが驚いた。今もその字をはっきり思い出すことができる。いわきにいる以上、いつかまた会えそうな気がする。

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