2016年2月28日日曜日

オーケストラの力

 今年もFMいわきからコンサートの案内状が届いた。たまにはクラシックで気分転換を――金曜日(2月26日)朝、いそいそとアリオスへ出かけたら、開場時間を開演時間と勘違いしていた。30分早く着いた。館内を探検しているうちに時間がきた。去年(2015年)と同じ大ホール3階右側そでが指定の席だった。
 震災後、FMいわきと東京都交響楽団が協力して「ボクとわたしとオーケストラ~音の輪でつながろう」を開いている。小学生(午前の部)と中学生(午後の部)が無料で招待された。FM開局時からしばらく、パーソナリティー相手におしゃべりする番組に出ていたのと、FMの支援組織「まちづくり倶楽部」に名を連ねているので、その関係で案内状が来たのだろう。

 大ホールがほぼ満席になったところで、団員がステージと客席から「ラデツキ―行進曲」を演奏しながら入場した。開演前はざわついていた子どもたちだが、行進曲が始まると静かに聞き入り、自然に手拍子がわいた。去年もそうだった。今年で5回目、たぶんずっとそうなのだ。
 
 ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」、J.シュトラウス2世のポルカ「雷鳴と稲妻」「観光列車」、エルガーの行進曲「威風堂々 第一番」が演奏された。ラデツキ―もそうだが、行進曲には、きょうもあしたも胸を張って、前を向いていこう(指揮者の大野和士さん)――という思いがこめられている。

 去年と同じく、最後の曲目「威風堂々」の前に、子どもたちが全員で「ビリーブ」を歌った=写真。大人にはNHKの昔の自然番組で、子どもたちには学校の卒業式などでなじみの曲だ。震災後は、歌詞がより身近なものに感じられるようになった。

 今年のアンコールは「ロンドンデリーの歌」。われわれには「ダニーボーイ」といった方がわかりやすい。アイルランド好きの人間としては、余韻が長く続く終わり方だった。

 日常は「小事」の連続だ。宿題・課題が解決したと思ったら、すぐまた別の宿題・課題がやってくる。ときに、こうして現実を離脱して音楽につかり、心のアカを落とすと、少し元気になる。それこそがオーケストラの持つ力だろう。

 元気がチャージされた勢いで翌日(きのう)、ある女性宅へ出かけた。「行政区の役員になってくれるとありがたい」。その場では断られたが、帰宅すると間もなく電話がかかってきた。「地区のために少しでも協力しないと……」。頭のなかでラデツキ―行進曲が鳴り響いた。

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