2016年3月27日日曜日

里の新団地

 夏井川渓谷の隠居やいわき市立草野心平記念文学館への行き帰りに、たまにそこを通る。いわき市小川町高萩。夏井川の右岸と支流・小玉川の左岸にはさまれた山すその平地だ。
 小玉川左岸の水田にブルドーザーが入ったと思ったら、たちまち戸建て住宅ができた=写真。双葉郡からの避難者のうち、富岡・大熊・双葉・浪江4町共通の復興公営住宅だ。福島県が建設した。道路の反対側、夏井川に近いところにも同じ住宅ができる。小玉川に近い方は「家ノ前団地」、夏井川に近い方は「高萩団地」というらしい。前者は53戸、後者は計80戸と、県の広報にあった。

 福島県・浜通りの自治体はそれぞれ、東に太平洋、西に阿武隈の山並み、間に人間が集中して住む平地の、「ハマ・マチ・ヤマ」のつながりとしてとらえられる。小川町高萩は川の流れからいえば、ヤマが終わってマチが始まる扇状地の最初の里だ。JR磐越東線の小川郷駅がある。通りには家が並ぶ。が、すぐ裏には田畑が広がる。その田畑が宅地に変わった。

 先日、公示地価が発表された。いわき市は昨年(2015年)、全国の上昇率トップ10を独占した。今年は高止まりになっている。小川地区はどうか。調査対象地点には入っていない。それだけ農村色が濃いということなのだろう。

 同じ小川地区に震災前から住宅の「ミニ開発」が進められているところがある。小学校の近くで、区の総会で初めて新規加入世帯があることを知る、といった状況が続いている。春分の日に、その地区に代々住むカミサンの親戚が言っていた。そこから中心市街地の平までは車でおよそ20分だろうか。通勤しやすく子育てしやすいうえに、自然が豊かな地区だ。

 宅地のミニ開発と同じで、沿岸部の災害公営住宅建設(市)に一段落がつき、県の復興公営住宅建設も農村部へ移ってきた、ということか。双葉郡の山寄りの農村部には、小川と似たような里の風景が広がっている。内陸部に住んでいた人にはどこか懐かしい土地になるのではないか。新年度にはホームコミュニティ(受け入れ地域社会)との共生が始まる。

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