2016年5月6日金曜日

山菜争奪戦

 山菜やキノコを採る人には目当ての場所(シロ)がある。シロは自分のものと、だれもが思っている。世の中、そう甘くはない。現実には早い者勝ち。勝ったり負けたり(採ったり採られたり)、だ。
“原発震災”後、野生キノコの摂取・出荷制限が続いている。山菜も種類と場所によってはベクレルの高いものがある。が、セシウム134が半減し、同137も減衰して、放射線量が少なくなってきた。で、夏井川渓谷の隠居の内外に生えるフキノトウ、小流れのクレソンは、今は普通に口にする。クレソンのそばに生えるコゴミ(クサソテツ)も、一度は摘んで食べる。

 今年は、春の到来がいつもの年より早かった。同じ渓谷の別の集落に住む友人が、師走のうちに梅の花が咲いたと驚いていた。その友人の畑と沢から白菜の菜の花、ルッコラ、葉ワサビ、クレソン、フキが届いたのはほぼ1カ月前。

 小流れのコゴミも早いかもしれない。隠居へ行くたびにチェックしたが、4月中旬まではなんの変化もなかった。採取記録を見ると、だいたい4月25日前後の日曜日に初物を摘んでいる。その日曜日をはずすと、もう摘まれてない。
 
 4月24日の日曜日、午後――。一歩遅かった。株立ちした若葉は6~8枚あるのだが、摘み残しが1枚残っているだけだった=写真。背丈からして前日か前々日に摘まれたらしい。
 
 私には、わずか20年前からのシロにすぎない。地元の人間にはそれ以上の年数にわたって、散歩がてら摘み採るのを楽しみにしているシロだったかもしれない。あるいは、ヤマザクラその他の花を見に来た行楽客が歩いていてたまたま目に留めたか。いずれにしても、摘まれたらあきらめるしかない。
 
 スーパーで売っている山菜は、どうしても買う気になれない。買うなら採りに行く。標高の高いいわき市川前町や隣の川内村へ行けば、まだ残っているだろう。が、そこまで“荒らし”に行くのもはばかられる。あれから5年。少しずつだが季節の楽しみが戻りつつある。山菜の争奪戦も復活した。

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