2016年11月11日金曜日

天然の「青海波」

 ときどき、道路にいきものの死骸が横たわっている。街場では猫が多い。畑や屋敷林が点在する住宅街ではハクビシン、郊外ではタヌキ、ノウサギ、フクロウ。夏井川渓谷に入ると、タヌキのほかに、テン、イタチ、コジュケイ、ヤマカガシなどが輪禍に遭う。わが家の前の歩道、側溝のふたの上にカルガモの死骸が横たわっていたこともある。
 先日(11月6日)、渓谷で珍しい死骸を見た。タヌキかな、いやタヌキにしては小さいぞ、イタチでもなさそうだ――車で100メートルほど通り過ぎたあと、気になってUターンした。大型の鳥だった。尾羽が短い。ヤマドリの雌?にしては羽に赤みがない。キジの雌か。(識別できないので、キジの雌ということで話を進める)
 
 首から背中にかけての羽の模様が美しい=写真。色は黒茶系だが、丸みを帯びた羽がクリーム色で縁取られている。茶とクリーム色の組み合わせが、衣装や焼き物の文様「青海波」(せいかいは)に似る。

 福島県の東半分、阿武隈高地から太平洋に至るフィールドは原発事故後、双葉郡を主に「人間と自然の交通」が断ち切られた。「自然と自然の交通」が中心になった。その結果、イノシシが繁殖し(キジやヤマドリも?)、セイタカアワダチソウが繁茂した。それで、いきものの交通事故も増えているのではないか。(きょうはあの日から5年8カ月の節目の日、月命日でもある)

 常磐道を利用して仙台からいわきに帰って来た若い仲間が、新地あたりでサルの集団に出合った。阿武隈の山中ならともかく、平地と接する山岸の自動車道にまで降りてきたのは、それこそ自然の成り行きだろう。「サルはちゃんと止まって車の通過を待っていた。人間に似ている、と思った」という。

 夏井川渓谷の磐越東線ではときどき、イノシシが列車にはねられる。はねられて、下の道路に落ちて息絶えるものもある。運よく死骸を見つけた人は拾って持ち帰り、「猪鍋(ししなべ)」にして弔う。震災・原発事故後は、それができなくなった。キジの死骸は、午後には消えていた。だれかがキジ鍋用、あるいは毛鉤(けばり)用に回収したか。

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