2017年2月15日水曜日

「昔野菜」のレジェンド

 いわき市でフランス料理店を営むオーナーシェフ萩春朋さんが「私の料理の先生」と呼ぶ女性がいる。いわきの山里・田人の「チイばあちゃん」だ。「自然な味で勉強になる」「遊びに行くと料理を作って待っていてくれる」「地元の食材を使うことの大切さを学んだ場所」――フェイスブックでそう紹介している。
『いわき昔野菜のレシピ3』(いわき市発行、いわきリエゾンオフィス企業組合編集=2016年刊)に、春・夏・秋・冬の4回に分けて、<蛭田チイさんの思い出は食と共に>というタイトルで、昔野菜を調査したスタッフがコラムを書いている(ネットで、「いわき昔野菜のレシピ3」で検索すると、すぐ読める)。調査スタッフが驚き、プロが尊敬する野菜栽培と料理の“鉄人”だ。

 前にも書いたが、いわき昔野菜保存会が2月5日、中央台公民館で「いわき昔野菜フェスティバル」を開いた。同保存会は、ブランド化した伝統野菜も、昔からの自産自消の野菜も等しく大切――そんな精神で、「在来作物」も「伝統野菜」も包含した新しい呼び名として「昔野菜」を使っている。

 フェスティバルでは、栽培講座、昔野菜を使った昼食弁当、講演のほかに、昔野菜種自慢の座談会が開かれた。映像も流され、チイさんは「作り手のレジェンド(伝説的人物)」として、座談会に出席した萩シェフは「料理する人代表」として紹介された。萩シェフがマイクを持ち、「新品種の栽培にも挑戦している。高級店よりもチイさんの料理が印象に残っている」と、「チイばあちゃん」のすごさを語った=写真。

 スタッフのコラムによれば、チイさんは年間100種類以上の野菜を栽培する。うち約20種は昔野菜。母親から受け継いだ種で栽培を続けている。萩シェフは「昔野菜に出合って人生が変わった」とも言った。昔野菜の生産者と料理人のネットワークが広がり、市民が「その時期だけ・そこでだけ」の<いわきの味>を享受する――こういうまちっていいな、と思う。

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