2017年3月26日日曜日

「むすめきたか」取材同行

 在来種の豆を調べている女性から、フェイスブック経由で連絡が入った。いわきで栽培されている小豆の一種、「むすめきたか」などの在来豆について話を聞きたい――。在来豆については知らないので、いわき昔野菜保存会の仲間を紹介し、生産者への取材に同行した。
 長谷川清美さん。『豆のハンドブック』(文一総合出版、2016年)『べにや長谷川商店の豆料理』(PARCO出版、2009年)の著書がある。『――豆料理』は2015年で9刷というから、ロングセラー本のようだ。

 いわき市が発行した『いわき昔野菜図譜』(2011年)によると――。「むすめきたか」は、主に三和町で栽培されている。代々家で種を継承し、天候不順による不作時には隣近所で種を譲り合って栽培を続けてきた。小粒で早く煮える。で、嫁に行った娘が里帰りしたときに、すぐに煮て食べさせることができるので、いつか「むすめきたか」と呼ばれるようになった。
 
 3月初旬、長谷川さんと仲間の車に同乗して、三和町渡戸の好間川沿いにあるSさん宅を訪ねた。「むすめきたか」の現物=写真=と、こしあん、煮豆、柏餅(かしわもち)を用意して待っていた。現役のころは、ご主人はバスの運転手、奥さんも企業勤めの兼業農家だった。今は70歳を超えて自適の暮らしをしている。
 
 奥さんは好間川の左岸域、山の陰の集落・永井から嫁いできた。実家でも「むすめきたか」を栽培していた。今栽培している「むすめきたか」は、実家よりさらに奥の集落・差塩(さいそ)から通っていた職場の仲間から種を譲り受けた。
 
 長谷川さんもフェイスブックで報告しているが、あんはあっさりしていて上品な味だ。三温糖と白砂糖を半々に使うのがポイントだそうだ。柏餅の葉は夏に摘んで冷凍保存をしておく。大きい葉だった。生産者自身が保存・調理にもたけている。農山漁村には、こういう多彩な「おふくろの味」を生み出す人がいっぱいいる。
 
 ただ、話を聞きながら思ったのは、生産者はルーチンとして自家栽培を続けているということだ。「意義があるから」「大切だから」とかいう前に、「家でつくっていたから」「もらったから」種を採り、栽培を続けている。そこに親からの愛と子への愛が加わる。
 
 天候によっては収穫が激減する。去年(2016年)の「むすめきたか」がそうだった。危うさと背中合わせの「自産自消」。次にバトンを受け取る人間がいなければ、種はあっという間に消える。

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