2017年3月30日木曜日

阿武隈の春の雪

 田村市の実家で法事があり、車で出かけた。3月中旬以降、山が二度ほど冠雪した。幹線道路は除雪されているはず――と思いつつも、行きは日陰のカーブや坂道が少ない夏井川沿いの道を利用した。結果的になんの問題もなかった。 
 いわき市から田村郡小野町まで、標高を上げながら2カ所で急坂が続く。夏井川渓谷の入り口に当たるJR磐越東線「磐城高崎踏切」付近の地獄坂、そしていわき市と小野町の境の坂。その先はなだらかな“準平原”だ。
 
 いわきの道路には、ほぼ雪がなかった。小野町に入ると、道端に雪のかたまりが点々と残っている。歩道の雪をかきあつめた残骸(融け残り)のように思われた。
 
 朝、家を出るときは同じ道を戻って来ようと思ったが、山あいの道でも大丈夫のはずと、帰りは国道288号を東進し、熊川水系の野上川渓谷を下って大熊町で山麓線(主要地方道いわき浪江線)に折れた。
 
 夏井川渓谷にはなかった雪が、こちらの渓谷にはあった。除雪車が出て雪を道端に寄せたので、走る分にはなんの支障もない=写真。道の周辺の風景が明るく感じられたのは、田畑が雪をかぶって日光を反射していたからだ。待機スペースにタイヤ式の除雪ドーザーが止まっていた。まだ「寒さの冬」が続く、油断はならない、ということなのだろう。
 
 望洋平トンネル、野上トンネルと下って玉の湯温泉トンネルを抜けると、「光の春」の世界に変わった。国道49号でいうと、三和町のいわき三和トンネルのようなものだ。今度の雪と雨は、そこが境目になった。浜通りの平地に住む人間の明るさは、風土的には雪のない冬の明るさが生んだ――直観的にそんなことを思った。

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