2017年10月16日月曜日

70歳の再デビュー

 土曜日(10月14日)は午後、二つのイベントに参加した。吉野せい原作の「洟をたらした神」上映会&トークショー(いわきピット)が終わるとすぐ、「まちなかアートフェスティバル玄玄天2017」の開幕に合わせたトークイベント「いわきの現代美術の系譜~緑川宏樹編~」(アートスペースもりたか屋)に合流した。
 日曜日は朝8時から、地元の公民館まつりでテーブルやいすを出したり、テントで物売りの番をしたりした。館内外でイベントが行われた。区長協議会が実行委員会の軸になっている。要は裏方だ。

 曇天のまま終わるかと思ったら、11時前から雨になった。園庭で行われた芸能発表は、舞台が屋根付きのトラック。その前にいすを用意したが、プログラムの3分の2が終わったところで観客はテントと玄関口に引っ込んだ。雨でテントの片づけができないため、予定より1時間早く解散した。
 
 家に帰って一休みしたあと、街へ出かけた。前日の玄玄天トークイベントのとき、玄玄天に作品を発表した高木武広さん(小名浜)から「ぜひ作品を見てほしい」といわれた。
 
 彼とは、昭和40年代半ばから10年間、いわきの美術シーンをリードした草野美術ホールで知り合った。今年(2017年)5月、阿部幸洋新作絵画展が平のギャラリー界隈で開かれた。スペインに住む阿部も、草野美術ホールの“同窓生”だ。そこで、四十数年ぶりに高木さんと顔を合わせた。

 作品5点がアリオスの1階東口ウォールギャラリーに展示されていた。作品を発表するのも四十数年ぶりではないだろうか。確か、私より1歳年上のはずだから70歳の再デビューということになる。結婚して商売を始め、子育てを終え、店を閉じた。あとは好きな美術に没頭しよう、となったのだろう。

 作品のひとつ、「時の移ろい」=写真=は5センチ大の標本箱風仕切り648個で構成されたミクストメディアで、それぞれの標本箱には貝、石、棒、平面の色絵などが配されている。
 
 若いころの作品は忘れたが、若い人たちの玄玄天にふさわしい挑戦的で実験的な作品だ。個々の小宇宙で構成された大宇宙=画面全体になにか仕掛けがありはしないか。たとえばだまし絵とか、別のなにかが浮かび上がってくるとか……。目を凝らしたが、なにかが見えてくることはなかった。
 
 草野美術ホールの“同窓生”は、もう何人も鬼籍に入った。松田松雄、緑川宏樹、山野辺日出男、同年代のK、後輩のH、S……。生活者としての時間を全うした高木さんの若々しい再始動に胸板が共振した。

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