2018年5月11日金曜日

地域の片隅で

 月初めの日曜日、早朝7時台。いわき市平中塩の水田地帯を行くと、網代(あじろ)笠をかぶり、墨染の法衣をまとって托鉢をしているお坊さんに出会う。山際に沿って小川江筋(農業用水路)が伸びている。幅4メートルほどの江筋を渡った山側に曹洞宗の寺がある。そこの住職だ。
 私がまだ現役のころ、定期的にこのお坊さんが福祉関係に贈ってほしいと、職場(いわき民報社)に浄財を持参した。浄財のもとが庶民のお布施だった。もう何十年も托鉢を続けているのだろう。

 この水田地帯で3、4回出会っている(こちらは車だから、目撃した、が正解か)。3年前のゴールデンウイーク後半最初の日曜日(5月3日)――。江筋のそばの民家の庭におじいさんが立っていた。お布施を用意しているらしく、お坊さんが近づくと門扉を開けて道に出た。ああ、こういうふうにして人は徳を積むのだな、と感心したものだ。

 今年(2018年)の大型連休最後の日は月初めの日曜日、5月6日。たまたま朝の7時半ごろ、夏井川渓谷の隠居へ行くために家を出た。中塩の水田地帯に入ると、はるか斜め前方山際の道を墨染のお坊さんが歩いている。

「今度見たらお布施をしたい」。前にカミサンがいっていたのを思い出す。で、そちらの道へハンドルを切ると――。「あれ、いない、おかしいな」「ほんとに見たの?」「うーん、見た。幻ではない。確かに見た」。そんなやりとりをしながら大回りをして、間道に止まっていると、山際の家の方からお坊さんが現れた。その家の奥にも家があったのだ。

ころあいをみてカミサンが近づき、貧者の一灯をささげる=写真。すると、「『子供だましですが』といって、これをくれた」。昔なつかしいガーナチョコをかざしてみせる。ひとまず念願をかなえたあとは、お坊さんと逆の方向へハンドルを切って、遠回りをして隠居へ向かった。

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