2018年8月4日土曜日

「ミンミン攻撃」

 未明の4時過ぎにはセミも目覚める。ミンミンミー。最初はつつましく。やがて日が高くなるとつんざくように、ミンミンミンミンミー、ミンミンミンミンミー……。今朝は寝坊したのか5時2分に鳴きだした。4時20分のヒヨドリには後れを取った。
 日中はミンミンミンの合間に、オーシツクツク、オーシツクツクのツクツクボウシ、ジリジリジリジリジリのアブラゼミ、朝晩、たまに遠く近くカナカナカナのヒグラシがうたう。そして、闇に包まれたあとも、思い出したようにジリジリジリジリ……。

夏は開け放した茶の間と木々の葉が茂る庭とが一体化する。それで、セミその他の虫が家に入り込む。庭木は柿、プラム、カエデ、イボタノキ、ナンテンその他。すべてが「セミの鳴く木」だが、中心はやはり一番大きな柿の木だ。

現役のころは日中、エアコンが稼働する街のビルの中にいた。昼休みにときどき、街のウラヤマ・石森山へ出かけて林内の遊歩道を巡った。夏は「蝉時雨」に包まれた。

職場に戻れば、暑さも蝉時雨も意識から遠ざかる。が、茶の間で座業を続けるようになって10年余。今年(2018年)は特に暑さが異常なせいもあって、庭のセミの鳴き声がこたえる。

蝉時雨は夏の季語。主役はアブラゼミ、立秋が近い今は、ミンミンゼミが中心だ。この季語が登場するのは江戸時代中期からだそうで、芭蕉の時代には単に「蝉の声」だった。「蝉の声」を「時雨」に見立てた人間は街の遊民だったに違いない。森の音のシャワーを浴びながら暮らす実業の人間には、とてもじゃないが「蝉時雨」などとしゃれる心の余裕はない。

 夏井川渓谷の森の中に住み、日中は街で仕事をしている友人夫妻が、早朝、至近距離でヒグラシの鳴き声に包まれる。「カナカナ攻撃」と表現していた。それにならえば、目と鼻の先5メートルからの「ミンミン攻撃」だ。

外国人はセミやコオロギの音を雑音と感じるそうだが、日本人だって間断なく「ミンミン攻撃」を受けていれば、耳をふさぎたくなる。

小さなちいさな緑の空間でしかないが、けっこうな数が羽化するらしい。すでに寿命が尽きたものもいる。ある朝、庭にミンミンゼミが転がっていた=写真左、アブラゼミの死骸もあった=写真右。セミの命は人間に比べたらはかないものの、あの小さな体だ、体積からすると精いっぱい生きて死んだのだ。

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