2018年9月16日日曜日

乳香と没薬を嗅ぐ

 8月は「地図の見方」。9月(きのう15日)は「香りの文化史」。いわき地域学會の市民講座は異色のテーマが続く。これまでは講師の話を聴く・レジュメを読む・画像を見る――が中心だったが、340回目にして初めて「嗅ぐ」が加わった。いい体験だった。
 吉武利文会員(香りのデザイン研究所)が、香りと人間のかかわり(古代の香料・古代のアロマセラピー・クレオパトラと香り・日本の香り・蒸留酒とアルコールの発見)とアロマセラピーについて話した。

 人間は火の発見とともに香りを活用するようになった。ものによっては煙とともに香りが出る。宗教が生まれると、それが人間と神の世界の橋渡しをする香(こう)に昇華する。香水を意味するperfume(英語)はラテン語のper funum(煙を通して)に由来するという。

吉武さんは小瓶に入った精油に細長い紙片をちょっとひたして、受講者に匂いを嗅いでもらった。乳香・没薬・麝香(じゃこう)・白檀(びゃくだん)・ラベンダー・橘(たちばな)・ヤブニッケイ。それぞれ個性的な香りが鼻腔を刺激した。

 香りの本やキリスト教関係の本を読んでも、「乳香」と「没薬」はさっぱりイメージがつかめなかった。その乳香をまっさきに嗅いだ。例えが当たっているかどうかはさておき、硬く鋭く強い香りがした。没薬は逆に重くて穏やかな感じだった。

精油のついた紙片を持ち帰り、カミサンに渡す。そのあともそばに置いて晩酌をやる。ときどき乳香の香りが鼻腔を刺激した。この香りの持続力もまた聖性を帯びる根拠になったのか。けさも時折、乳香の香りがする。

 吉武さんはハワイアンズの「与市」の薬草蒸し風呂も担当している。9月は初めていわき産のエゴマ(ジュウネン)を使った。どこから調達しているのかと思ったら、いわき昔野菜保存会の仲間のNさん(大久)の畑だった。野菜を含むいわきの植物がこんなかたちで活用されるというのもおもしろい。

 吉武さんは最後に、いわきの香りを観光する「観香マップ」づくりを提案した。いわきの香りとはなんだろう。潮の香り、フラワーセンターの温室や花壇の香り、夏井川渓谷の天然林の香り、湯本温泉の湯気の香り……。まち歩き・野歩きの楽しみが増えた。
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 今夜は、渓谷の隠居でミニ同級会が開かれる。というわけで、あすのブログは休みます。

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