2018年10月3日水曜日

人形浄瑠璃+シリア難民俳優2人劇・上

 人形浄瑠璃の「勘緑 秋のツアー2018 この地球に生まれてこれから先どない生きんねん!」いわき公演がきのう(10月2日)午後7時から、平・三町目のアートスペースもりたか屋で開かれた。人形遣いの勘緑さんとフランスに住む双子のシリア難民俳優マラス兄弟(35)が共演した=写真。およそ50人が観劇し、平和への思いを新たにした。
演目は二つ。シリアから戦火を逃れてパリに着いた2人の難民の避難生活を描いた「二人の難民」(マラス兄弟)と、沖縄戦をモチーフにした「ボーン・オン・ジス・プラネット(この地球に生まれて)」(木偶舎とマラス兄弟)で、兄弟が慣れないフランス語で日本人の前で2人劇を展開するという実験的な舞台も、事前に日本語による台本朗読があったために集中して見ることができたようだ。

勘緑さんはフランスで兄弟と出会った。主宰する木偶舎が今年(2018年)2月、ヨーロッパツアーを行い、ランスの劇場で、3人で人形を動かす文楽のワークショップを実施した際、シリアで生まれ、演劇と脚本を学んだ俳優で双子の兄弟が参加した。

兄弟は日本で原発震災がおきた2011年、内戦化したシリアから脱出し、ベイルート(レバノン)、カイロ(エジプト)、パリ(フランス)を経て、今はパリの東北部・ランスに住む。

ワークショップの最終日、「この地球に生まれて」を上演すると、兄弟は涙を浮かべて勘緑さんに伝えた。「音楽をシリアのものにすれば、この演目は今のダマスカスだ。我々は同じく、子供が死んでいくのを何度も見た」。勘緑さんも、生まれた場所を追われ、家族バラバラになりながらも、平和に向けた表現活動を続けている兄弟に感動し、「いつか一緒に舞台に立ちたい」と思うようになった。

勘緑さんは2009年、勿来の関公園内にある吹風殿で人形浄瑠璃の公演を行った縁で、勿来ひと・まち未来会議とつながりができた。東日本大震災後にはボランティアとして勿来を訪れ、人形を遣ったり、泥かきをしたりした。そのつながりで人形浄瑠璃とマラス兄弟のいわき公演が決まった。

いわきには原発事故で避難を余儀なくされた双葉郡の人々が住む。沿岸部で津波被害に遭い、内陸部に移り住んだ人も少なくない。シリア難民もまた「家を追われ、あるいは失い、ふるさとを追われて、よその地で生きるしかなくなった」人々だ。双葉郡からの避難者や避難者に思いを寄せるいわき市民などがコラボ劇に見入った。

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