2019年7月2日火曜日

「むすめきたか」がつなぐ縁

 いわき昔野菜保存会の会報「ROOT(ルート)」第4号=写真=を読んで、あらためて「種の行く道・来る道」に思いをめぐらせた。
巻頭に、今年(2019年)2月に開かれた「いわき昔野菜フェスティバル」の座談会の概要が載る。真ん中には「旅する種」と題して、いわき市の昔野菜と茨城県常陸太田市の在来作物を紹介している。巻頭と連動した記事だ。

小豆の「むすめきたか」(いわき)と「娘来た」(常陸太田)は特徴・由来が似ている。婚姻その他で人と人がつながり、それに伴って種も移動したのだろう。

常陸太田にはいわき昔野菜保存会と同じような市民組織「種継人(たねつぎびと)の会」がある。座談会に出席した同会代表布施大樹さんと会員の北山弘長さんは、同市の北部、福島県矢祭町と接する山間地の久慈川支流・里川流域に住む。同地域には福島県から嫁に来た女性が多いという。

山には山のつながりがある。常陸太田と福島県中通り南部、その山里と山里を結べば、浜通り、つまりいわき市の中山間地域は意外と近い。そんな視点も、この場合は大切になる。

「旅する種」から――。「むすめきたか」も「娘来た」も、赤色とクリーム色のまだら模様が特徴。東北地方の在来種「姉子小豆(あねっこしょうず)」によく似ており、阿武隈高地ではいわき市三和町とそれに隣接する古殿町・平田村・小野町で栽培されている。いわき市江畑町などには黒色タイプがある。常陸太田にも黒色タイプがあって、こちらは「娘来たか」と「か」が入る。

「むすめきたか」は、小粒で皮が薄いために早く煮える。嫁に行った娘が里帰りしたときに、すぐに煮て食べさせることができる。それで、「むすめきたか」と呼ばれるようになった。常陸太田の「娘来た」も同じエピソードを持つ。ただし、「娘来た」の方がちょっと大きい。

いわき昔野菜フェスティバルの座談会で、布施さんが会の取り組みを紹介した。地元の和菓子屋・パン屋・ケーキ屋・カフェなどと連携して契約栽培を広め、新しい商品開発などが進んでいる。少量生産の在来作物でも「収入を得られる仕組み」をつくるためだという。これは素晴らしい取り組みだと思う。

同会にも会報がある。今年5月発行の第8号に、北山さんがいわき昔野菜フェスティバルに参加した感想を、布施さんが映画「娘来た」の完成と上映会について報告している。メンバーの中に映画をつくる人がいる。いわき昔野菜保存会でもやってみたい企画ではある。

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