2019年10月18日金曜日

台風19号⑥もらい水

 いわきは三つの流域の連合体――。日本で最初の超広域都市いわきを可視化するには、川を軸にすることだ、と私は思っている。いわきの北と南、山地と平地とでは、天気が異なるときがある。今度の台風19号でも明暗が分かれた。
南部の鮫川流域と中部の藤原川流域は、土砂崩れや道路冠水による通行止めのほかは、これといった台風被害の報告は聞かれない。高柴ダムが緊急放流されたために、私は当初、鮫川下流域の浸水被害を心配した。ところが、そちらはそうでもなくて、北部の夏井川流域、それも平地の中心市街地・平の周辺のベッドタウンに被害が集中した。

 昭和41(1966)年に14市町村が合併して「いわき市」が誕生した。以来、行政は「規模の経済」を求めて財政効率化を推し進めてきた。いわきを北部と南部に分けて大型施設を建設し、効率の悪い小規模施設は整理する、という道筋をたどった。

上水道は北部・平浄水場、南部・山玉浄水場が基幹施設として建設された。それで市内上水道のネットワークが完成し、南部・北部どちらかで支障が出ても、ただちに融通がきくようになっている、と思っていたのだが……。現実にはもろかった。肝心の浄水場が浸水被害に遭った。

 浄水場浸水が広範な断水を招いたために、さまざまな被害類型が生まれた。浸水した家、断水した家、その両方に見舞われた家(いや、地域といった方がいいかもしれない)。わが家は断水だけにとどまった。それでも日常のリズムが狂った。食事は、皿ラップのごはん、プラ容器のおかず。味噌汁だけが断水前と同じくおわんで=写真上。

毎日、カミサンの実家(平・久保町)へ行ってもらい水をする=写真下。ゆうべ(10月17日)は、浸水も断水も免れたカミサンの妹の家(好間町下好間)でもらい風呂をした。体だけでなく、頭も洗い、ひげもそった。あんまり長く風呂にいたために、「どうしたんだろう」と心配された。浸水被害に遭ったうえに断水までしている家の人たちのことを思うと、ほんとうに申しわけない。久しぶりに人心地がついた。
 カミサンは洗濯物とネギも持って行った。ネギは台所を借りて細かく刻んだ。それを持ち帰ってみそ汁の具などにする。

市水道局の発表によると、いわき駅周辺は好間・上野原浄水場からの水で、駅南方の福島高専周辺は山玉浄水場・法田ポンプ場からの水で断水が解消された。平浄水場は、来週以降には復旧の見込みだという。見通しが立たない状態から少し前に進んだ。早ければあと数日で水が復活する。

といっても、それは浄水場に近いところで、最も遠い久之浜地区は復旧まで4日程度ずれこむ。なにはともあれ光が少し見えてきた。

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