2019年11月9日土曜日

台風19号㉗ワンリバー・ワンコミュニティ

 シャプラニール=市民による海外協力の会のネパール事務所長Kさんから、近況報告の便りが届いた=写真。
 シャプラは、ネパールでは平野部のチトワン郡マディ地域で洪水被害を減らすための事業などを展開している。活動の基本は「ワンリバー・ワンコミュニティ」だという。

先日まで日本で行われていたラグビーワールドカップで初めて決勝トーナメントに進み、8強入りを果たした日本の合言葉は「ワンチーム」。川を軸にした流域でみれば、上流も下流も同じ運命共同体だ。同じコミュニティの仲間として向き合う意識を――となれば、ワンチームと本質は同じだろう。

しかし現実には、そうは問屋が卸さない。「下流域の住民は自分の集落が安全になること=下流域にインフラを設置してほしいと考えますが、中流域にインフラを設置することで下流域の被害が減るという考えには至りません」。日本でも同じことがいえる。上流域の住民は下流域のことをあまり考えない。下流域の住民も上流域のことはなかなか想像ができない。川そのものもふだんは意識の外においている。

 台風19号の被害が広範囲に及ぶなか、ネパール事務所の現地職員が来日、10月18日から11月1日まで全国キャラバンを展開し、マディ地域での防災活動について報告した。同時に、シャプラはいわきで飲料水の緊急支援を行い、「みんなでいわきボランティアツアー」を実施した。そうした非常時のなかでの、ネパールからの手紙だった。

 自称「夏井川ウオッチャー」だ。現役のころ、毎日、夏井川の橋を渡って街の職場とわが家を往復した。休みの日には堤防をぶらついた。夏井川は、私の住む平・神谷から河口まではすぐだが、川の始まりはどこだろう――若いときに地図帳を開き、大滝根山の南東麓が水源と知って以来、夏井川は「ふるさとから流れてくる川」になった。以来、毎日一度は夏井川を見るように心がけてきた。

夏井川が私の「母なる川」になってしばらくたってから、上流の田村郡小野町に関東で焼却したごみの主灰などを埋め立てる一般廃棄物最終処分場が建設された。小野町から見れば処分場は町を流れる夏井川の最下流に位置するが、いわき市から見れば最上流近くの水源地だ。水環境に危機感をもつ市民が立ち上がり、裁判を起こしたが、建設にストップはかけられなかった。それどころか、後年、増設問題が起きた。

水環境を守るためには、行政的な「地域」ではなく、降った雨が合流する「流域」の視点をもたねばならないことを、下流域の住民は痛感した。そして、今度の台風19号と、それに続く大雨だ。水環境だけでなく、川の防災を考える上でも「流域は運命共同体」という考えが大切になる。

ワンリバー・ワンコミュニティでいえば、いわきは、大きくは3流域連合体だ。同じいわき市内の中部・藤原川流域と南部・鮫川流域は、被害は夏井川流域ほどではなかった。3流域は尾根筋をはさんだ隣組=ワンチームでもある。夏井川流域の片付けボランティアとしていっそうの協力を――という声が聞こえてくる。

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