2020年7月13日月曜日

ヤマユリとマムシ

 しばらくぶりの青空だった。きのう(7月12日)朝8時前、夏井川渓谷の隠居に着くと、雲の切れ間から光が差し込み、あっという間に青空が広がった。
「きょうは咲いているかもしれない」。渓谷を縫う県道小野四倉線沿いにヤマユリが点々と生えている。7月に入ると緑色のつぼみがふくらみ、8日には白みを増していた。つぼみの白は花の白。思った通りヤマユリが咲いていた=写真上1。

 渓谷のヤマユリは7月20日前後に開花する。おととし(2018年)は例外的に、7月8日に開花を確認した。今年はそれより遅いが、いつもよりは1週間ほど早い。

渓谷のずっと北西、夏井川の水源・大滝根山(1193メートル)の北側のまちで生まれ育った。夏休みに入ってすぐ裏山へ昆虫採集に行くと、ヤマユリが咲いている。夏休み、といえばヤマユリ――。私のなかではそんな記憶ができあがった。そのためなのか、ヤマユリの最初の花を見ると、胸のなかにある屈託が一瞬、消える。漂う香りに脳みそが覚醒する。

 もう一つ、頭に入れていた「かもしれない」がある。隠居の庭に生息しているマムシだ。先日、後輩が連続的に草刈り・木の剪定をしてくれた。そのとき、マムシに遭遇したという。
 場所は隠居の真ん前、高さ2メートルほどの石垣で仕切られている上の庭と下の庭(放置した結果、ヨシ原化した)をつなぐ枕木の階段の上部。この階段は支えが朽ちたため、上の庭からは20センチほどずり落ちている。「きょうもいるかもしれない」。隠居に着いてすぐ後輩が言った場所へ行く。と、階段より右側の上の庭の縁にいた=写真上2。

後輩がきれいに庭の草を刈ってくれた。今までは草に隠れて見えなかったが、ふだんからそこで休んでいたのではないか。というのは、13年前(2007年)のやはり7月、いわきに住む中学校の同級生が隠居の濡れ縁を改造中、同じ場所でマムシに遭遇した。同級生の撮った写真のコピーが残っている。

私は、隠居へ行くと西側の菜園で土いじりをする。カミサンは隠居の前を中心に、庭の草むしりをする。そうやってカミサンは何年か前、スズメバチに刺された。マムシがいることは承知しているが、変に熱中するとそれを忘れて庭の縁に行きかねない。後輩の話を伝え、私が目撃した様子を話して、「ここはまちの家の庭ではない」ことを強調した。

あとでまた見に行くと、マムシは上の庭から階段の方に下りていた。それだけではない。もう1匹が階段より左側の上の庭の縁にいた。棒で追うと、2匹とも石垣のすきまに消えた。そこがすみかになっているらしい。

 マムシはネズミやヒミズ、トカゲなどを捕食するという。渓谷は小さな生きものたちの王国だ。なかでも隠居は、1週間のうち6日は生きものたちの天下になる。これはもう生きものたちと共生するしかない。人間から見たらスズメバチもマムシも危険生物だが、彼らから見たら人間が一番の危険生物なのだから。

0 件のコメント: