2020年10月10日土曜日

台風19号㊿1年後の今

        
 台風14号が室戸岬沖から潮岬沖へと進んでいる(1年前の台風19号を思い出す)。明11日未明には八丈島の南南西にあって、東へ、それから南東へとUターンする予想に変わった。東北地方からはだいぶ離れることになる。ありがたい、雨風はあっても心配の度合いが減る。

福島民報はきのう(10月9日)まで、社会面トップで「ルポ被災地は今/台風19号1年」を連載した。さきおととい(10月7日)は<農業>をテーマに田村市常葉町の水田と須賀川市の果樹園を取り上げた=写真上1。右側には、いわき市平下平窪で自宅が被害に遭った福島高専名誉教授橋本孝一さんらが自主的に防災報告書をまとめた、という記事が載る。

橋本さんは前から知っている。結婚したばかりのころ、下平窪で家が近所だった。カミサンの小・中学校の同級生でもある。常葉の水田の持ち主は、私の小・中学校の同級生だ。複雑な思いで両方の記事を読んだ。

福島県東部を阿武隈高地が縦断している。最高峰は中央部の大滝根山(1193メートル)。同山に降った雨は、北西では大滝根川となって郡山市の阿武隈川に合流し、南東では夏井川となっていわき市の太平洋に注ぐ。去年(2020年)はこの分水嶺の両側で台風の被害に見舞われた。

私の同級生の場合――。「耕作する水田約一・五ヘクタールのうち、大滝根川沿いにある約六十アールの土地に台風19号であふれた川の水が流れ込んだ。激しい水流で土がえぐられ、一メートル以上の段差ができた場所もある。川砂が表面を覆い、大きな石が転がる。水路も壊れた。今春の作付けを断念せざるを得なかった」。記事の見出しには「土壌回復 最低5年」とあった。

昭和39(1964)年春に中学校を卒業後、5年刻みで同級会を開いてきた。直近ではおととし(2018年)の10月21日、古希を記念して郡山市の磐梯熱海温泉で同級会が開かれた。地元に残っている同級生が幹事になって準備を進める。その幹事の一人だった。小さいころからの「元気玉」だが、さすがにガックリきたらしい。新聞を通して、1年前の惨禍がふるさとにも及んでいたことに胸が痛んだ。

橋本さんは、自宅が「台風19号で床上浸水した。二階に避難し、かろうじて難を逃れたが『津波への備えとは違い、水害に関してはどこかに油断があったかもしれない』」という。橋本さんの専門は河川工学と環境工学だ。防災対策をまとめた「報告書の一部を、月内に地元情報誌で発表する」と記事の末尾にあった。

その情報誌がきのう届いた=写真上2。『てこてこ~川とともに生きる 令和元年台風19号から1年の今~』(一般社団法人Teco発行)。平窪地区の水害を中心に、コロナ問題、東日本大震災から10年目の今なども盛り込んだ。編集を担当した1人から頼まれて文章を書き、夏井川流域の新ハザードマップが流域内の各戸に配布された際、「とにかく早めに避難すること、2階への垂直避難さえ危ない」と書いた拙ブログも転載された。

表紙がいい。いわき市から田村郡三春町に移り住んだ版画家大久保草子さんが空・山・川・海と循環する水の宇宙を表現している。「川を忘れた暮らし」から「意識の中に川が流れる暮らし」へ――そのための1冊になるといい。

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