2020年10月15日木曜日

ソメイヨシノが狂い咲き

                     
 きょうはこれとあれをする――。朝、庭に出て歯を磨きながら、頭の中で一日の予定を反芻(はんすう)する。それをしないと忘れてすっぽかしてしまうことがある。おととい(10月13日)は、午前11時から吉野せい賞の記者発表、午後は中央紙の記者氏が個人的に訪ねてくる。

 その2件を確かめながら歯を磨いていると、ホトトギスの花が目に入った=写真上。早いところでは夏の終わりから見られるが、わが家の庭では毎年10月中旬になって咲き出す。歯ブラシを口に入れたままホトトギスの花の写真を撮る。そんなところをカミサンに見られると怒られる。「のどにつかえるからやめて!」。アマガエルも庭木の上で鳴いている。気持ちのいい一日の始まりだ。

 午前10時過ぎには市役所へ出かけた。まずはふるさと発信課へ。年度後期が始まると、10月1日現在で行政区内の隣組長と世帯数をまとめた書類を届けないといけない。終わって、文化振興課で一服したあと、記者クラブに移動し、第43回吉野せい賞選考結果と第44回同賞ポスター選考結果の発表に臨んだ。私は5人の選考委員を代表してせい賞の選評と総評を述べた。

 いわきローカルの文学賞だからか、記者は毎回、地元3紙(福島民報・福島民友・いわき民報)プラス1紙程度だが、今回は完全に3紙だけ。テレビも中央紙も姿を見せない。3人のうち2人は旧知の記者なので、会見前にあいさつを兼ねて少し雑談をした。

 会見は30分もしないで終わった。夏井川の堤防を利用して帰宅した。この日は出かけるときも堤防を利用した。ハクチョウが飛来する季節になった。猪苗代湖へはすでに到着した。それから1週間~10日後に夏井川にも姿を見せる。頭の中ではカウントダウンが始まっている。なんとしても来た日に写真を撮りたい――そんな気持ちで毎年、ハクチョウの飛来を待つ。

 今は操業をやめた工場そばのソメイヨシノが1本、狂い咲きをしていた=写真下。その木だけどういうわけか葉がない。それもあって、秋なのに春と勘違いして咲き出したようだ。こちらに1輪、あちらに2輪……。堤防沿いに四季咲きザクラがある。これも花をいっぱい付けていた。こちらは当たり前の開花だが、ソメイヨシノの狂い咲きには驚いた。

 土手のヒガンバナは赤色があせてくすみ、代わって河川敷がセイタカアワダチソウで黄色く染まり出した。

 午後3時になると、中央紙の福島支局でデスクを務め、今は東京本社にいる記者氏が楢葉町で取材した帰りだといって、立ち寄った。会うのは初めてだ。が、福島支局時代、部下の新人記者(女性)がカミサンを取材に何度も福島市から通った。彼女を介して間接的に知っていたので、話が弾んだ。

交通事故や市の予算などのストレートニュースは、大きく強い公権力から「発表もの」として出てくる。記者は権力の近くで仕事をしている、つまりは「近・大・強」の世界に身を置いているという自覚が必要。同時に、権力から遠いところにいる人間、弱く小さな存在、つまりは「遠・弱・小」の世界にこそ記者としての本分を発揮する場がある。

毎日、そんなことを確かめながらネットコラム(ブログ)を書いている、ネットで横行している匿名の誹謗中傷についても、日本新聞協会の旧「新聞倫理綱領」にあった「人に関する批評は、その人の面前において直接語りうる限度にとどむべきである」を柱にすべきではないか、といったような話をしていたら、たちまち2時間が過ぎた。

久しぶりに新聞記者と接し、考え、話しながら過ごした一日だった。きのうの新聞で偶然知った(忘れていた)のだが、きょう15日、「新聞週間」が始まる。活字のオールドメディアにもまだまだ可能性はあるはずだ。

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