2020年10月2日金曜日

空に架かる橋

 山あいを川が流れ、そばの田んぼをはさんで道路と線路が延びる。そこに農道と跨線(道)橋ができる、と知って2年。田んぼは橋脚と接続道路に替わり、山側にも橋脚が新設された。先日通ったら、鉄骨の橋げたが1本、橋脚に架かっていた=写真上1。これがあと1つか2つ?のれば、空に橋が架かるのだ。

 いわき市小川町高崎地内――。平野部が終わり、夏井川渓谷へ入ろうかというあたりで県道小野四倉線に接続する県広域農道の建設工事が進められている。同農道は、四倉町玉山地内を起点、小川町高崎地内を終点とする延長10キロ強の“天空のハイウエー”だ。

 渓谷にある隠居への行き帰り、高崎地内の工事現場を通る。おととし(2018年)夏、田んぼに土砂が運び込まれ、やがて県道のそばに「新しい農道を造っています」「【復興】広域農道整備3003工事」の看板が立った。

 ずいぶん前だが、二ツ箭山東南端に「上岡トンネル」ができた。できたのに利用できない状態が続いていた。隠居からの帰り、ときどき別ルートを利用する。二ツ箭山腹に分け入ったとき、使えないトンネルがあることを知って驚いた。これも広域農道の一部だった。予算の関係で事業が中断していたのだろう

東日本大震災後、「復興」の名目で工事が再開された。玉山から上岡トンネルまでの四倉側が開通し、去年夏には二ツ箭山のふもとを行く国道399号から広域農道に入り、同トンネルを利用して玉山へ抜けられるようになった。トンネルの銘板には、「2003年10月竣功(しゅんこう)」とあった。トンネルは完成して15年以上も風が通りぬけるだけだった。

 残るは国道399号から西側の終点部だ。小川町福岡地内までは道路ができている。その先に加路川がある。ここでも高崎地内と同じように道路を新設し、橋を架ける工事が進められている。

 去年暮れには県道沿いに空撮を利用した看板(橋の完成予想図)が立った。夏井川渓谷を下って来ると、同川第三発電所を過ぎたあたりで県道と広域農道がつながる。そこで右折し、左回りに跨線(道)橋を渡り、いったん坂を上りつめてから加路川へと下り、橋を渡ってまた延々と上っていく。やがて、既設のルートに出る――というコースを想像して心が弾んだ。

 橋げたが架かったついでに、田んぼを掘削中に出てきた「卵石」についても記しておく。去年8月初旬、巨大な玉石が工事現場の隅に寄せられていた。直径2.7メートル、重さ25トン。巨大さに引かれて、橋と道路が完成したらモニュメントにしたらいい、とブログに書いた。それが、結果的に別の場所で実現した。

 いわき市四倉町のいわき四倉中核工業団地に、メッキ加工の東新工業(本社・横浜市)が進出した。いわき市内では好間中核工業団地に続く2番目の工場だ。その敷地内に安置された=写真上2。工場建設を請け負ったのは堀江工業。広域農道を請け負っているのも同社。東新工業の希望に堀江工業がこたえた。

東新工業は、いわきとのつながりを大切にしたい、という思いから、「時空を繋(つな)ぐいわきの光と風」をテーマに、建物内外を10点のアート作品で飾った。そこに巨石が加わった。「卵石」と命名された。それもあって、広域農道が完成したら真っ先に利用したい――なんて考えがよぎる。 

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