気候変動は、私たちが住んでいる地域の環境に直結した問題でもある。
猛威を増した低気圧や台風、洪水、酷暑、豪雪、竜巻、……。異常気象による自然災害が多発し、人間の生命と財産を脅かす。
いや、「人新世」が招いた気候変動に人類自身が翻弄されるようになった、というべきか。
地球は、地域はこれからどうなるのか――。その手がかりを知りたくて生態学者などが書いた本を読み続けている。これは、4月19日の拙ブログ「タネをまく生物」の続き。
ソーア・ハンソン/黒沢令子訳『温暖化に負けない生き物たち――気候変動を生き抜くしたたかな戦略』(白揚社、2024年)=写真=に、こんな例が紹介されている。
海水温の上昇で南の海にすむヒマワリヒトデが苦しんでいる。ヒマワリヒトデはそれで北方の海に生きる道を開いているようだという。
「かつては凍てつくほど冷たかったベーリング海の水温は、今では温暖化の影響で、生息を阻む大きな障壁ではなくなり、ヒマワリヒトデはアリューシャン列島全域とその向こうの沿岸に新たに棲みつけるようになった」
開発の手が入らなかったために、鳥類の昔のデータと比較検討ができるペルーの山地では、「絶滅のエスカレーター」がフルスピードで上昇しているという。
1985年には普通に見られた、高い標高に特化した種のうち半分近くが姿を消した。残っていた種も個体数が激減し、生息地も頂上の直下に限られていた。
「そもそも山はピラミッドのように上に行けば行くほど狭くなるので、どんな動植物が移動してこようとも占有できる面積は狭くなり、最終的にはなくなってしまうかもしれない」
クリス・D・トマス/上原ゆう子訳『なぜわれわれは外来生物を受け入れる必要があるのか』(原書房、2018年)にも、同様のことが書かれている。
「動植物はおよそ17キロのスピードで、北極または南極へ向かって移動している。(略)それが、人間が引き起こした温暖化が1970年代の半ばに明確になって以来、毎年、毎日続いている」
アルプス山脈の南麓、スイスとイタリアにまたがる「マッジョーレ湖」周辺の話。「野生のシュロが実をつけるほど大きくなったところはどこも、下層は次の世代の葉でまったくのジャングルになっている」
わが家にも鳥がタネを運んできたのか、実生のシュロがある。マッジョーレ湖畔のシュロも、最初は中国か日本から運ばれた園芸種だったにちがいない。
やがて「湖の土手を縁取る森でおおわれた暖かい斜面はほとんど全部青々としたシュロの林になるだろう」というところまで占有しつつある。
「マッジョーレ湖は人新世からの絵葉書だ」。こんな文章に出合うとつい地球の未来について考え込んでしまう。
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