ミョウガは、春の「ミョウガタケ」と初秋の「ミョウガの子」が食材になる。どちらも刻んで味噌汁に散らす。香りを楽しむ。
わが家の庭、南隣の故義弟の家の庭、夏井川渓谷の隠居の庭と、ミョウガは春、競うように生えてくる。
最初はだれかが植えたのだろう。ほんのわずかの数だったのが、地下茎で増えに増え、今では30~40本になった。
手入れをしなくても、春には先端がとがった茎をのばし、月遅れ盆のころには根元にふっくらとした花穂を出す。
わが家の庭は、冬には草が枯れ、ミョウガも刈り払うので、土がむき出しになる。それが春になると、たちまち緑で覆われる。カミサンが植えた園芸種の花も、こぼれ種が根付いて数を増やしている。
その中でミョウガの芽生えを知るのは容易ではない。花眼(老眼)になってからはなおさらだ。
それでも朝、歯を磨きながらヤブガラシの芽を摘む。ついでにミョウガタケの芽生えを確かめる。
春の大型連休を迎えたころ、5センチほどの芽生えに気づいたと思ったら、次々に地面から「とんがり帽子」が伸びてきた。
渓谷の隠居の庭はどうか。こちらはキリの木の根元にミョウガの小群生がある。キリは台風で枝が折れたため、樹高1・5メートル余のところから伐採した。
カミサンがその一角を花壇にし、春を迎えて手入れをした。それで、日光がたっぷり当たる。
5月4日の日曜日に見ると、15センチほどに伸びたミョウガタケがあちこちに出ていた。平地のわが家の庭より生育が早い。
下の庭にはフキが群生している。早春につぼみ(フキノトウ)を摘んで食べたが、今はつぼみとは別のところから生えたフキが葉を広げつつある。
カミサンはこのフキを、私はミョウガタケを摘んだ=写真。フキは身欠きにしんと一緒に煮物になって出た。ミョウガタケは刻んで味噌汁に散らした。1年ぶりに戻ってきた春の土の味である。
ミョウガタケは一夜漬けもいい。カブとキュウリを刻み、風味用として庭のサンショウの木の芽とミョウガタケをみじんにして加え、だし昆布も入れる。即席漬けだからこそ、風味とうまみが出る。この季節、一番好きな食べ物だ。
糠漬けも試したことがある。最初は10センチくらいの長さにして漬けたが、イマイチだった。浸透圧がよくはたらかない。細いわりには硬いので、塩味と滋味がしみこむには時間がかかる。
皮をむかないで入れたウドがそうだった。皮をむいたとたん、すぐしんなりした。それにならって、ちょっとゆがいて縦に包丁を入れる。
まだ茎が細いこともあって、24時間でしんなりした。刻んでご飯のおかずにすると、ミョウガの香りが口中に広がった。次はフキも――なんて妄想がふくらむ。
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