この花=写真=を見るのは3年ぶりだった。しかも、隠居の庭に現れた。変わった植物である。名前はサイハイラン。
6月1日の日曜日に地区の球技大会が開かれたため、夏井川渓谷の隠居へ行くのは1日遅れて翌2日になった。
いつものように菜園の隅に生ごみを埋めたあと、隠居の庭をウオッチングした。枯れてキノコのなる木がある。アラゲキクラゲはと見れば、なかった。
根元には剪定枝が積み重ねられている。そこにもキノコはなかった。ん? 代わりに、菌根共生をするサイハイランがあった。花が咲いていたのでわかった。
3年前の2022年5月中旬、同じ隠居の別の場所でサイハイランが咲いていた。そのときのブログがある。一部を要約・再掲する。
――隠居と道路の境に前週まで気づかなかった花のつぼみがあった。サイハイランだ。前に検索してわかったのだが、サイハイランは「部分的菌従属栄養植物」らしい。
サイハイランは緑色葉を持っているが、薄暗い林床にいるため独立栄養だけで生育は難しいと考えられていた。
そこで研究が進められた結果、ナヨタケ科の菌類と菌根共生をしていることがわかった。ナヨタケ科のキノコはヒトヨタケ、キララタケ、イヌセンボンタケなどだ。
緑色葉を持ちながらも菌根菌に炭素を依存する「部分的菌従属栄養植物」である可能性が考えられるという(谷亀高広「菌従属栄養植物の菌根共生系の多様性」)。
ある年突然、サイハイランが庭のモミの木の下に出現した。それがわが隠居での出現第1号だった
2022年は隠居と道路との境に5株も現れたが、前に出現したモミの木の下には影も形もなかった――。
そのモミの木の下に現れたときにも(菌根共生系とは知らずにいた)、ブログ(2020年6月11日付)に書いた。それも要約して再掲する。
――おやっ、サイハイランではないか。こんな薄暗い庭に生えるなんて、キノコの力でも借りてるんじゃないの?
脳内にナラタケと共生する腐生植物のツチアケビの姿が浮かぶ。ツチアケビは光合成をおこなう葉を持たない。代わりに、養分をすべてナラタケに依存しているという。
サイハイランもツチアケビと同じラン科の植物だ。ネットで調べたら、やはりキノコと関係があった。
毎年、渓谷を縫う県道小野四倉線のどこかでサイハイランを見る。5月も後半になると県道は緑のトンネルに変わる。薄暗い道端の草むらで淡い紫褐色の花が下向きに咲いている。
2020年も6月7日、車を運転中に目に入った。帰りに写真を撮る。そう決めて隠居に着いたら、庭にあった。庭に生えたのは初めてだった――。
サイハイランは漢字で「采配蘭」と書く。花の付き方が、武将が軍勢を指揮するときに手にする「采配」に似ているからだという。
名前は物々しいが、たたずまいはひそやかだ。6月8日には2本になり、同15日には3本が咲いていた。22日にはそれらしい花茎を1本だけ残して消滅していた。
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