額縁が壊れたらしく、作品がむき出しになっていた。縦15センチ×横12センチほどの小さな銅版画だ=写真。
作者は、カミサンがデザイン事務所に勤めていたころ、新しくスタッフに加わった若い女性、ということだった。
少し離れたところからは、髪の毛を逆立てたペコちゃんのように見える。が、ちゃんと見るとネコが2匹、相撲でも取るような間合いで対峙(たいじ)している。
手前で後ろ姿を見せているのは白いネコ。奥で白いネコと向き合っているのはキジトラ。2匹とも胴が異様に長い。
それもあって、キジトラの胴と足が怒ったペコちゃんの眉と目に、白いネコの胴がひん曲がった口に見えてしまう。
デフォルメ(変形)は美術の一手法だが、ネコの周りの線刻はシンプルというか、素朴というか、技術的にはやはり若さが感じられる。美大を出たばかりだったのだろう。
わが家の庭には地域ネコがよく現れる。なかでもさくらネコのゴン(キジトラ)は半住人といってよい。
ほかに、鼻が黒い黒白のハナクロ、そして最近は真っ白なシロがやって来る。茶トラが来たり、真っ黒いネコが現れたりしたこともある。
銅版画とほぼ同じ構図で、手前にハナクロ。奥に茶トラがにらみあっているところを見たことがある。
ハナクロが茶トラにむかって低くうなり続ける。茶トラは茶トラで振り返り気味にハナクロを見続ける。と、次の瞬間2匹が走り出し、隣家のフェンスのそばでだんごになった。
銅版画のキジトラと白いネコも、やがてはうなり声をあげて取っ組み合うのだろうか。そんな展開を想像させる空気感がある。
現実のネコたちはといえば、白いネコは相変わらずお高くすましている。ハナクロは、私を見るとこそこそ姿を消す。ゴンはすっかり慣れてすり寄って来る。茶トラと黒はこのところまったく姿を見せない。
おもしろいことに、ネコも毛皮を着ているとはいえ、寒暖の変化には敏感に反応するようだ。
ゴンは、夏のような暑さになると軒下のミカン箱に入って日差しを遮り、冬のような寒さが戻ると縁側のえじこ((人間の乳幼児を座らせておくわら製の保育用具)に入って丸くなっている。
このところ周期的に天気が崩れる。しかも、週末に雨になることが多い。梅雨のような天気に、人間もネコも翻弄されている。
そうそう、ネコが来る方角も決まっている。ハナクロは西から、白いネコは南の民家か故義弟の庭の方からやって来る。白いネコの本宅はそっちの方にあるのだろう。
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