2025年8月18日月曜日

盆が終わる

                                
 これは福島県中通りの山里の記憶。家々のごみは可燃物がほとんどだった。レジ袋もプラスチック容器もなかった。

 たいていのごみは家で燃やした。川に流したこともある。月遅れ盆の精霊送りはどうだったか。やはり川を利用したのではなかったか。

 それからすでに半世紀以上。浜通りのいわき市では、精霊送りの供物を市が収集する。川や海には流さない。環境を守る意味から当然だろう。

 供物の特別収集は月遅れ盆最終日(8月16日)の朝と決まっている。わが行政区では、県営住宅集会所前の庭に臨時の祭場を設け、当日の早朝、区の役員が出て供物を引き受ける。それが終わったあとの9時ごろ、収集車がやって来る。

準備から片付けまで、2日がかりだ。集会所の庭は道路に面している。集会所前に車が止まっていると支障をきたすので、14日には「駐車ご遠慮を」の立て看を路上に置く。

それを入れると3日がかり、いや、杉の葉の調達などを加えると、数日間は精霊送りが頭から離れない。

集会所に備え付けの長い座卓3脚を出して供物の受け取りスペースにする。それを囲むように竹を四隅に立て、縄を張り、間に杉の葉とホオズキを飾る――のだが、数年前からは正面だけに簡略化した。

これだと竹は2本、杉の葉とホオズキもそこだけですむ。江戸時代の絵を見て思いついた。役員全員が高齢なので、簡素化も絶えず頭に入れておかないといけない。

祭場をつくるのは15日夕。まずは草引きだ。草は茂ったままになっている。祭場になるところだけでも払わねば……。

実はごみの散乱も覚悟していた。ちょっと前、集会所の敷地内にある区の防災倉庫を点検したとき、集会所前で若者が数人、座り込んで飲み食いをしていた。そのあと別件で行くと、空き缶・空きボトルが草むらに散乱していた。

それも片付けなくてはと覚悟していたら、レジ袋が集会所の前に置いてある。「ここに座るな、ごみを持ち帰れ」といった意味の張り紙がしてあり、中に空き缶・ボトル類がまとめられていた。同じ思いの人がいるのだろう。

おかげで、こちらは草引きだけに集中できた。スニーカーに靴下、長ズボン、ハンドカバーに手袋。残暑が厳しくても手を抜けない。軽装は禁物だ。カマでけがをすることがある。蚊も現れる。

今年(2025年)はなぜかネコジャラシ(エノコログサ)が密生していた=写真。ネコジャラシは一年生草で根が浅い。すぐ抜ける。あらかた草が消えた時点で作業を終えた。

16日は早朝5時半、型通りにセットして供物の受け取りを始める。すでに供物を置いていった人がいる。毎年のことで、6時開始の予定が年々早まっている。

今年も9時前には収集車がやって来た。それでやっと盆の務めから開放された。盆は休み――そんな安らいだ感覚は、区の役員になってからは全くない。

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